砂場

囚われた国家の砂場のレビュー・感想・評価

囚われた国家(2019年製作の映画)
4.1
雰囲気としてはトリュフォーの「華氏451」っぽい感じでド派手SFXを期待する人はがっかりするかもしれないが個人的にはかなり好きな一作であった。

地球が全面降伏をしてエイリアンに地球が統治されて9年。アメリカの警察は治安維持のためエイリアンの指示通り人々を管理していた。体内に埋め込まれたGPS、ドローン、盗聴などなど。

レジスタンス活動をする黒人の兄弟は幼い頃両親をエイリアンに殺されていた。警察&エイリアンによるレジスタンス潰しが激しさを増し、いよいよ壊滅かと思われたが、、、、

後半の途中くらいまでは、レジスタンスの抵抗活動がドキュメンタリー風速いカット割りで描かれ全体的に暗い色調もあり事態の進行が見えにくくキャラ判別も付きにいし、説明的な要素を省いているのでリアルな雰囲気に徹している。
ところが終盤〜最後は意外な展開があり案外エンタメとしても面白い。

自分は映画を見るときに現実との関係をどうしてもみてしまう癖があり、今回も今(2020年6月)アメリカで起こっている暴動とかシアトルの自治区とかのイメージを重ねてしまう。特に本作は荒っぽいカメラでドキュメンタリー風に撮影していることもあり現実と映画の区別が付かなくなる瞬間があった。
もちろん本作制作は2019年なので2020年6月の今が反映されているはずはないのだがアメリカで過去何度もいろんな暴動が起きておりゴッサムシティでもみられるように一種の原風景になっていると言える。
この映画の設定がユニークなのはエイリアン統治下の監視社会が失業率も犯罪発生率も低くなりそこそこ上手く行っているという点にある。
そうなると別にエイリアン統治でいいんんじゃね?という考えもありだと思うのだ。
ちょうど中国が経済成長をして豊かさが底上げされているため市民は監視社会をある程度許容していることと似ている。
「囚われた国家」で人々はそこそこ豊かであり、決して奴隷のような生活を強いられているわけではない。ここがよくあるディストピアものとは違う。
この設定だとこのレジスタンスが何を得ようと戦っているのかがボヤける気がするのであるが、一方でリアルだなとも思う。
「囚われた国家」はディストピアではないが自由がない。まさに”自由”を求めてレジスタンスは戦っているのだ。
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