ノラネコの呑んで観るシネマ

我は神なりのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

我は神なり(2013年製作の映画)
4.8
海外版の円盤は持ってるけど、ようやくこの傑作をスクリーンで観られる。
ダムに沈む村の保証金を狙って、奇蹟を売り物にするエセ教団が、不安を抱える住人たちの心にスルリと入り込む。
彼らの正体にただ一人気づいたのが、呑んだくれで暴力的な村の嫌われ者。
彼は人々を正気に戻すため、闘いを始める。
例によって、どこまでもダークなヨン・サンホの世界。
アニメーションだからまだ良いけど、実写ならエグすぎて過ぎて耐えられないかも。
主人公と娘、教団の牧師と実質オーナーの詐欺師。
それぞれのサイドにも複雑な対立構造を抱え、一切の予定調和を拒否するプロットは、最後まで先を読ませず、とことんまで神に愛されない人間たちの織りなす愛憎のドラマは、信仰とは何かを強烈に問いかける。
遠藤周作は「沈黙」で日本はキリスト教にとって根の腐る"沼"だと書いたが、キリスト教が独自の進化を遂げた韓国も相当に底なしに見える。
容赦無い展開に打ちのめされるが、同時に満足感に満たされるのは、そこに納得の人間ドラマがあるからだ。
詐欺師の顔が、李明博元大統領そっくりなことからも、ダム計画のモデルは、彼が推し進めた4大河川整備事業なのだろうな。
たぶん似たような実例もあったのだろう。
ブログ記事:
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