カルダモン

JUNK HEADのカルダモンのレビュー・感想・評価

JUNK HEAD(2017年製作の映画)
5.0
書き途中だった他のレビューを放り出して、なんとかフレッシュなうちに書き留めておきたく。

まず堀貴秀という人物がとても興味深かった。特に本業が内装業であるという経歴、テーマパークの壁画などを描いたりする傍らで仕事で余った資材などを利用しながらコツコツと作り上げていくというスタイル。
監督・原案・キャラクターデザイン・編集・撮影・照明・音楽・絵コンテ・造形・アニメーター・効果音・VFX・声優・etc、つまりはほとんどすべての工程をゼロから作り上げているのだけど、何かに取り憑かれていなければこんなことは不可能であるし、結果として生まれた作品を見ればなぜ一人でやっていたのかよくわかる。頭の中にあったものが誰の制約も侵害も受けずに生き生きと呼吸する様をみていたら、誰かの手垢は付けたくないだろう。意味など超えて感動してしまった。

圧倒されるのはストップモーションアニメをまったく作ったことのない人間が独学で7年間を費やしたという制作のプロセスと、作品にとって最も重要な世界観の構築度。継続は力、というだけでは到底こんな作品は作れないんじゃないだろうか。汚れた機械仕掛けとグロテスクな怪物が有機物と無機物の対を成して、主人公が地下深くに迷い込むほどに、暗闇の中で蠢く生命力に飲み込まれてしまいました。目玉を点で描く、あるいは描かない表現やデッドテックな造形も最高でした。グロいエイリアン的デザインやエグい欠損描写が苦手な人には拒否反応があるかもしれませんが、それ以上に受け取れるものが大きいと思います。

ニコ、ホクロ、火の見張り番、異形の子供たち、詐欺師、クノコ屋、グルメツアーに向かう女衆、職長、、、、。どの登場キャラクターにも同じだけの熱量が込められるのはそれが自らの手で捏ね上げた人形であるからに他ならない。だからこの作品にはモブキャラなんてものは存在しない。なかでも三バカ兄弟の愛すべきオフビート感にのたうち回りました。この最高さ一体何?!すべてのセリフが意味をなさないハナモゲラ語であったことも魅力に繋がっていて、インタビューなどでも度々語られているように『不思議惑星キンザザ』を感じるものでした。クー!!字幕で関西弁表現にしたりっていう遊びやキャラ付けもすごく楽しかった。

全三部作の構想で絵コンテは描き上がっているそうなので、あとは資金さえあれば制作可能だそうです。完結を見るのは何年後なのか想像すると気が遠くなりますが、お金があってもやっぱり一人で作って欲しいので、時間はかかってもいいのでずっと待ってます。生きる希望が一層強まりました。ありがとう!!