まっつん

JUNK HEADのまっつんのレビュー・感想・評価

JUNK HEAD(2017年製作の映画)
4.5
話題沸騰中の本作。これはですね...キテます。かなりキテます。「作るのに7年かかった」ということぐらいしか知らずに観てですね、観た後にパンフやらで色々補強したのですが(パンフの出来がめちゃくちゃ良いので絶対買った方がいいです)、こんな作品はちょっと前代未聞かも....

監督の堀貴秀さんは、もともと内装業をやっていた方だそうです。んで、映像技法などについては学んだことがないと。そんな彼は、30分のパイロット版をたったひとりで制作。セットは1/6スケールの物を全て組み上げ、もちろんストップモーションアニメなんか作ったことないから全て独学で学んでやると。ここまでで、4年。そして、パイロット版の続きを、3〜4人のスタッフを雇って制作開始。内装の仕事で使っていた仕事場を、撮影用に改装して朝から晩まで休み無しで制作を続け、さらに3年。全部で7年。

とサラッと書いてますけど、これとんでもないことで。ハッキリ言って、意味わかんないです。ストップモーションアニメって手間もお金も超かかるわけですよ。1秒24コマの世界で、実際に物を動かして撮るわけですから。それを7年....キテますよね。

しかし、出来上がったものを観るとですね、またちょっと違う感想が浮かんできまして。「えっ!このクオリティのものがたったの7年?!」っていう。制作において専門機材をバッチリ用意してるわけではないし、しかも節約してるとこはガッツリ節約してるんですよね。それで、このクオリティで2時間弱の映画を「たった7年で」っていう...

本作はハッキリ言って、お話としては纏まりが悪いところもあると思います(それは構想として3部作であるということもあると思いますが)。そのうえ、堀監督が影響を受けたと公言している「不思議惑星キン・ザ・ザ」や「エイリアン」、「ヘルレイザー」のエッセンスが割とストレートに入れ込まれていたりもするので、「あ、これ観たことある」って感じる箇所もいくつかあります。しかし、そんなことは小さな問題で。本作を特別なものにしているのは、作品全体にべっとりと張り付いた「感触」です。これはストップモーションアニメ特有の美点でしょう。現実の世界では、まず知りうることが不可能だと思える感触が、手に取るかの如く伝わってくる。全て手作りしたパペットの、地下世界の燻んだ空気感の、独特な食物連鎖の、そしてセックスと超残酷の「感触」が堀監督の美学と渾然一体となって流れ込む。「JUNK HEAD」はまさしく感触の王国なのだ。超オススメです。