えふい

JUNK HEADのえふいのレビュー・感想・評価

JUNK HEAD(2017年製作の映画)
4.3
大衆受けとはほど遠い、アクの強すぎる登場人物(「人物」なのかすら怪しい)たちやクリーチャー造形、排泄物や「クノコ」等の強烈なビジュアル。反してストーリーテリングやギャグはむしろスタンダードかつ古典的で、貴種流離譚的と表するならその源流は神話の時代にまでさかのぼれるやもしれない。しかしそこには確かな生と死の芳香が漂っていて、無感情にしかし無残さだけはしっかりと描かれる死亡シーンが圧倒的な説得力でもってわれわれの眼前に映し出される。
基本コミカルだからこそ際立つグロテスクさはいっそブラックジョーク的でもあり、その妥協しないシビアな死生観が本作全体の空気を独特なものに仕上げている。

映画のポスターが宣伝を第一義につくられるという事情を鑑みたうえでなお、本作を「狂気」「伝説のカルトムービー」などの安直な決まり文句でくくってしまう商業主義の残念さには、ひとまず目をつむってやるのが優しさというものだろうか。
「ほぼ一人で、七年かけて制作」というコマーシャルにはうってつけの特殊性だけをことさらにピックアップすることは、むしろ本作を素直に楽しむことの妨げになりかねない。どうか色眼鏡で見ることなく、この愛らしくも可笑しい、しかし底知れぬ世界を存分に堪能してもらえるように願ってやまない。
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