環境破壊により地下に活路を目指した人類は地下開発のために人口生命体マリガンを創造。自我に目覚めたマリガンは地下を支配し、人類と戦争を始めた。それから1600年後、新種のウィルスにより絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化を続けるマリガンの調査のためにボランティアに応募した主人公をポッドに乗せ、地下に投下する・・・
監督・原案・キャラクターデザイン・編集・撮影・照明・音楽・絵コンテ・造形・アニメーター・効果音・VFX・声優・etc これらを堀貴秀というクリエーター一人で手掛けるストップモーションアニメ。
30分版を2013年の完成の後、幾多の困難を経て長編版を2017年に完成、2021年に劇場公開という経緯。
劇中に登場するプロップやセットなど手作り感溢れる造形は、みな薄汚れていてウェザリングや錆の表現など、モデラー的視点からも必見の仕上がり。
地下世界の廃墟然とした人工物の集合体は「ボトムズ」のウドの街を想起させ、クリーチャーはハルキゲニア風のマリガンの変異種などカンブリア紀の軟体動物的で、そのグロさと凶暴性は『エイリアン』や『クローバーフィールド』『メイズランナー』のクリーチャーを彷彿とさせるところがあります。
猥雑さとキッチュなキャラクターデザインが混然一体となった独自の作品世界は、ギレルモ・デル・トロなどが賛辞を惜しまないのも当然といえるでしょう。
予告や映画の冒頭でクレジットされる作品世界の説明を頭に入れながらも、冒頭からしばらくは何が起きているのかよくわからないのですが、物語が進むにつれて、その内容が少しずつ把握できるようになっています。
地下世界で起きる物語はまったく事前の予告などから予想される内容とは異なり、物語がどこに向かっているのか見通しが立たないのですが、バトルシーンなどのアクションと地下世界の様子が次第に分かってくる展開が織り交ぜて進むうち、後半に向かって異様なハイテンションを形作っていくのです。
公式サイトなどの解説によれば、本作は3部作のうちの1作に相当するとのことなので、本作は作品世界の導入として“第一部完”という感じで閉じられます。
本作が劇場公開されてからの注目の集まり方からして、続編が作られることは間違いないので、辛抱強く待つことで、この物語の全体像を掴むことはできると思います。
この強烈なオリジナリティ溢れる作品が、いかにも日本的SFオタク・アニメ的世界に立脚して堂々と世に問うていることが本当に喜ばしいことだと思うのでした。
まだまだ時間はかかるかもしれませんが、是非このまま完結まで持っていって貰いたいと思います。