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累 かさねのbibliophageのレビュー・感想・評価

累 かさね(2018年製作の映画)
3.5
長いぼさぼさ髪の中なら睨む、芳根京子の目がちゃんとホラーです。こちらを怯ませる力があります。土屋太鳳の踊りは安定の表現力です。長めの舞台での踊りのシーンは美しくて見入ってしまいます。

累という漢字は”るい”では無く、”かさね”って読むんですね。読めませんでした。累という女性は口の端から目の下にかけて、口裂女を想起させる傷があります。大女優の娘ですが、相当内にこもっています。ただ、演劇の才能があるらしい。こちらは芳根京子。一方のニナは売れない女優。でも美人。冒頭の演劇シーンはちゃんとへたくそに見えます。でも、有名になりたい野望を持っています。結構いやなやつです。こちらは土屋太鳳。

そして、累の持っている口紅をつけて、キスをするとお互いの顔を入れ替えることができる。顔が移動します。魂が入れ替わるのではありません。これを理解しておかないとややこしくなります。体も入れ替わってるジャンと思うとややこしいので、とにかく顔が入れ替わっているんだ、という設定です。従って、身体的能力、性格は元のままです。(実写なので3サイズも慎重も入れ替わっちゃうんですけどね。演じる2人が入れ替わりますから。ファーストシーンはこの理屈が理解ができまでんでした。)

なので、顔に傷あり+体硬い累に、美人のニナの顔が移動してきて、美人+体硬い累になります。

2人の演技は素晴らしいと思いました。わがままで打算的でいやなやつを土屋太鳳がちゃんといやなやつで演じていました。根暗でおどおどしている、根暗を芳根京子がいかにもいじめられてるやつで演じてました。顔を入れ方あと、性格が逆転する。顔に傷があっても、ランランで出かける累の顔のニナ、美人でも、背をまるめて自分を出せないニナの顔の累。

ただ、ホラーになってないのです。軽いのです。描写もストーリーの運びも薄いと思いました。(なので、どきどきせずに見ちゃえます)特に、友情出演(なんで?)の横山裕が(ごめんなさい)魅力的で無く、下手。この男性が魅力的で無いと2人が取り合って、というシーケンスが成り立たない。

「赤」を基調とする色合い的に、どうしても梅図かずおの「洗礼」を思い出していました。こちらは年老いた女優が、娘の体を手に入れようとする。強欲と嫉妬、正視できない、すっごくいやーな話でした。累でも母の女優は、強欲を押し付けようとします。この話も、もたぶんいやーな話にできたはず、(多少、それを期待していた)なのだと思います。けど、すーーっと見ちゃったかな。
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