監督のクリストファー・ランドンの過去作である『ゾンビーワールドへようこそ』がいまいち乗り切れなかったので、今作もあまり期待していなかったのだけど。
相変わらずコメディとしてもホラーとしても中庸な感は否めないものの、タイムループという突飛な設定をトリガーにすることで全体的にちょうどよい風味に仕上がっている。
低予算映画なので全体的に迫力には欠けるがアイデアを生かした堅実かつ丁寧な作りになっていて、意外と見応えのある仕上がりになっている。
死に戻り系のタイムループモノの醍醐味は「ひとつずつ困難を乗り越えて成長していく」過程にこそあると思うのだけど、本作もその描写に対して素直に向き合っている。
ツリー(ジェシカ・ローテ)という主人公のキャラはタイムループする世界という舞台に対して効果的に設計されており、はじめはどう考えても同情の余地のなかった性悪っぷりが、死を繰り返すたびに段々と変化し浄化していく様子はなかなか巧みだった。
大学生という年齢設定も計算されており、大人と子どもの狭間で揺れ動くアンビバレントな心情が、繰り返される死によって揺れ動き成長していく、というジュブナイルムービーとしての側面が垣間見えるのも今作の持ち味。
不条理な物語なので作り手側の強引な解釈で突き進む部分もあるにせよ、全体的には器用にまとめた映画である。
一方で器用貧乏過ぎて、独自に突き抜けた個性みたいなものは見えづらいと感じてしまうのも事実だった。
ポップコーンみたいなライトな口当たりでコメディ映画としてはなかなか良質。
人気が出るのも納得の「ちょうどよい」映画でした。