マッスルゾンビinウエスタン

ハッピー・デス・デイのマッスルゾンビinウエスタンのレビュー・感想・評価

ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)
4.3
ホラー映画の主人公の定番といえば、真面目系または内気系なヒロイン。一見弱そうなヒロインが窮地に追い込まれた時に見せる爆発力に、応援せずにはいられなくなるのです。

が、しかし。
今作のヒロインはその真逆。性格最悪クソビッチ!応援する価値ゼロ!周りから恨み買いまくってそうな女が、自身の誕生日に何者かに殺される。「ざまぁ」以外の感想しか出てこない!

が、そこからがこの映画の面白いところ。何故か誕生日の朝にまた戻り、夜に殺されまた戻る。このループを抜け出すため、当日の朝をともにした(本当にともにしただけ)のナード君と一緒に、犯人探しに繰り出すのでした。

ここで活きてくるのが、主人公・ツリーのビッチな性格。恐怖に怯えるのでなく「アタシを殺しやがってマジ許せねぇ!」と逆にテンション上げていく。一般的なホラーヒロインが後半から覚醒するのに対して、こちらは最初からクライマックス。
ポジティブで明るくて行動的で、むしろループを楽しんでる様相すらあるので、どんどん好感度が上がり、気づいたら彼女を応援している自分がいるのです。

その一方で、何度も死を経験するうちに自分を見つめ直し、自らを顧みて、疎遠になったいた父をはじめ人間関係を再構築していく。それと並行し、無限に思われたループにも「リミット」があることが明らかになる。

そして犯人を特定し、覚悟を決めて対決へ!ループもののクライマックスにおけるこういったシークエンスって、本当に好き(ジョジョ4部とか)。そこからもう1個どんでん返しが盛り込まれてて、最後まであんこギッシリでした。


今作はホラー映画に属するものですが、グロい血みどろも過度なびっくりもドロドロした暗さもありません。ぶっちゃけ、怖くありません。スリリングなシーンよりも笑いどころの方が多いくらい。
だけどこれは間違いなくホラー。エンターテイメントとしてのホラーの要素をとことんエンタメに昇華させた、「観ると元気が出る」ホラー映画。苦手な人でも楽しめる、稀有な一作だと言えます。