ベルサイユ製麺

犯罪の女王のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

犯罪の女王(2016年製作の映画)
3.2
日頃のレビューで韓国映画の基礎レベルの高さを散々褒めちぎっておりますが、たまにトンデモないのが混じって来て結局やっぱりマジ気が抜けません。

地方都市で無認可の美容院を営む母ミギョン。息子イクスは検事を目指してソウルで1人暮らし。ある日イクスから一本の電話。「なんか今月水道代が120万ウォン(約12万円位?)らしいからお金ちょうだい」!そんな訳であるかと慌てて息子の下宿するアパートに駆けつけたミギョン。生意気な息子に疎まれながら高額水道代の謎を追いかけるうちに、このアパートで起こったある物騒な事件の核心に迫ってしまう…。

た、タイトル!…内容と100%関係無い!原題が読めないので何処でこうなったのか不明ですが、全く言い得てません。

母ミギョン役のパク・チヨンさんは、ストーリー的にはあき竹城みたいな姿を想像してしまうかもしれませんが、実際は天海祐希的な美人さんで“コメディエンヌも出来るのよ”みたいな感じですかね。イラっ。この方も含めて、殆どの初見の方ばかりです。韓国に於いても俳優のクラスと映画の規模は比例してしまうのでしょうか?
作品自体のトーンはサスペンス・コメディと言った感じで、んー、グランドホテル形式、というか、ファミコンのアドベンチャーゲームみたいにアパートの住人に話を聞きまわったり、忍び込んでアレコレ物色したり…。この作品で始めて知ったのですが、お受験がマジ戦争な韓国では、受験勉強の為にカンヅメになる為の下宿という文化があるみたいですね。多分。勉強になります。
で、ミギョンと現地で手懐けたチンピラの2人で探偵ごっこしてるうちに存外にヤバイ展開になっていくのでございます。…面白いか否かで言えば、
…面白いの☺︎、でも。

この作品、メチャクチャ癖が強いのです。全体のノリが韓国というより香港ぽい。コメディの時のジョニー・トーみたいな雰囲気で、シリアスなシーンなのか笑わせたいんだか分からない様な事がしょっちゅうなのですよ。とにかく独特。見た事無いフィーリング。
韓国映画って、題材の豊富さに比べて語り口のバラエティは余り感じない印象で、勿論レベルの高さ故ではあるのですが、正直キム・ギドクとかを除けば概ね似たようなルックになりがちだと感じるのです。その意味で言えば、今作は確実にオンリーワンの魅力に溢れていて、こういう作品が増えることは一概に喜ばしいと思います。願わくば、スーパーハイクオリティのスーパーオリジナル。もう少しだけ分かりやすくして頂戴…。
「韓国って見た目も味付けも全部おんなじだよね」って思ってる方には是非お試しいただきたい、とっておきの珍味でございます。

…因みに本編終了後、モノクロ・サイレントのほんの数分のショートフィルムみたいのが再生されます。…もーマジわけ分からん!三宅裕司の“えび天”思い出したよ!