レオピン

ミスター・ノーバディのレオピンのレビュー・感想・評価

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
3.8
西暦2092年。人類は死を克服していた。生殖としてのSEXもなくなりブタ細胞を使ったテロマー化という新技術により、、、とにかく人類は不死となっている。
唯一人118歳の男性だけが限りある命をもった最後の人類として全世界から注目されていた。
その男性がいよいよ死を迎えるという。そこで語られる彼の物語とは、、

なんだかなぁw

結局、あの時母を追いかけたホームで、後ろで叫ぶ父の声と板挟み状態になった少年が夢を見たというオチなのか。それとも15歳の時、バイク事故で重傷を負った少年がベッドで見た夢なのか。

鳩の迷信行動からバタフライ効果、ひも理論、エントロピー理論。宇宙収縮論と科学知識も織りまぜながら最後夢オチでいいんですか。えっ浅い?

ニモが語る記憶ではアンナ、エリース、ジーンという女性たちと出会うが全てがバラバラで全部信用出来ない。確かなものが何一つない。
いや、でもビッグクランチが起こる世界というのはメイン線のようでいいのかな。宇宙が収縮を始める2092年まで生き延びろ!

これは元々混乱するように作られていて筋を追っていても仕方ない。要するにパラレルワールドのお話で全部可能性として存在したわけだ。どうやらそれぞれの系(世界線)で少なくとも12通りくらいの人生があるそう。
個人的に底辺のニモがアンナとドラマティックな再会を果たし灯台のベンチで抱き合った人生が一番よさげだが。。

となるとどれがホンモノなんだろって話になるが、いや全部なかった説も考えられる。彼は全部保留することで可能性だけ温存した。実際には何も選ばなかった。そしてそのまま年をとった。限りあることで逆に救われるという事を身をもって知っていたため彼は不死を選ばなかった。この地獄から抜け出すために。。ちょっとこれは暗過ぎるか。

おそらく監督は人間が選択することを前に恐怖してしまう面をみせたかったのだろう。そういう意味では過去も未来も同一線のリニアではなく円の中にあるということを見通した映画『メッセージ』に近い。

ニモは忘却の天使に選ばれたことによって、生まれながらにあらゆることを予見できていた。それはすべての世界線を同時に知り得たということ。長寿だったのはそのためか。予知出来るといっても多分株やクジで儲けるということは出来ないんでしょう。

ラスト、ニモが大往生しかけた時に宇宙大収縮がはじまった。全てを予知できていた爺いがさぁこれから答え合わせだとばかりにウキウキし出す。逆回転なのにメチャ前向き。ここが好き。人生は全部正解。オールOK

怖かったのがシステムエラーかバグのように、見るものすべてアーガイルの服を着ている世界に陥ったとき。ここにいる人たちは全員おかしい。変だ。自分がどこにいるのかも分からない。誰だ。そこの角、ハリボテ?セット?
電車の中やどこかの試験会場でこれに近い感覚に陥ったことがある。そんな時「思い出せ」「起きろ」なんて声が聞こえてきたりしたら…これはヤバい。基地の外にいってしまうとこだった。

ま、こういう胡蝶の夢系なやつは心にゆとりのある時に観る作品。間違っても洗濯ものを畳みながら見る映画ではない。(でも宇宙とか結構ヤバいんで色々と考えすぎちゃう人は逆に洗濯もの畳み切ったら思考は終わるんでそれはむしろいいかもしれない)

最後に、あの未来の医者。顔が怖すぎるよ。顔面QRコード人間やないか。

⇒挿入曲 Buddy Holly 「Everyday」
⇒理解するともっと面白くなるだろうもの:ビッグクランチ論
⇒人生の選択に迷った時に観たい映画 『未来の想い出 Last Christmas』(‘92)、etc.

(2019.7)
レオピン

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