ソウル

ミスター・ノーバディのソウルのレビュー・感想・評価

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
4.2
素晴らしいとしか言い表せない

冒頭の演出で、鏡に写る自分を見つめる二モの引き画から、いつの間にか鏡の中のニモの世界へ引き込まれそれが現実化していくあの映像表現。その数秒で、凄い映画に出会ったとわかった。

こんな事言うのもあれだが、本当に自分が学生の頃に映画撮るならって考えていて実現できなかった題材をこの映画がまんまやっていてくれて、感極まってしまった。

人生はいくつもの選択がある中でどの道を選ぶかは自分しか決めることが出来ない。例えどの道を選んだとしても、
その道を選んで正しかったと思えることや、後悔する部分がある。
つまりは正しい道はなく、その選択をしたことで自分がどのようにその後の物事を捉え、そしてどのように生きるかが大切。

自分が常に考えてきた、「人生は常に二択であり、その先には無数の自分がいる」というシンプルな考えから、自分の行く末に対する素朴な疑問があった。

小さな選択の違いで生じる人生の変化、いわゆるバタフライ効果。
過去にあった人生の転機とも言える選択から、その日の夕食を何にするかという些細な選択まで。その選択の違い一つで自分はどのような人生を描いていたのだろうかと幾度となく想像したことがある。ただし人は単純、後悔をした時だけ時間を巻き戻そうとするし、選択を誤ったと思い込む。自分もそうだったが、この映画がそうではないのかもしれないと悟らせてくれた。

映画はまさしくシュレーディンガーの猫。
1歩先には常に二人の自分がいて、2歩先には恐らく無数の自分が存在する。
何通りもの人生に正解はなく良いも悪いもない。時間が遡ることはないのだがら、全ては捉え方次第。

「バタフライエフェクト」「ミッション8ミニッツ」などこの題材を扱った映画は他にもあるが、ここまでの説得力とリアリティ、そして映像表現の素晴らしい作品には出会ったことがないし、今後出会う事もなさそう。
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