エンポリオ

ミスター・ノーバディのエンポリオのネタバレレビュー・内容・結末

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

頭でも心でもなく感覚に訴えてくる作品。
不死身でない最後の人類として不死の人類にその記憶を語るニモ。ニモノーバディという存在が歩いてきた道とは一体何だったのだろうか。
見事な作品。ただでさえ鑑賞、考察、議論が行われることが非常に多い映画という文化において、これほど見方、意見が分かれそうな作品もなかなかないように思える。結末まで受動的に見続けるには若干の物足りなさがあり、能動的に見続けると終盤からじわじわと顔を出す本性にしてやられる。いやいや、がっつりSFな設定にした意味あるの?という指摘も的を射ているのが、これまたこの作品の面白いところに思えてくる。
人類の抱く不老不死への憧れ。科学が持つ功罪自体にスポットが当てられているというよりかは、科学の持つ功罪が一種の舞台装置として機能しているように感じられた。西暦を重ねる毎に科学は進歩していき、人類が望んで手にし得ないことの方が少なくなってきている感は否めない。望めば叶う現代科学=不老不死の人類に対して、苦楽を味わう、そのことによって人生の可能性、生きることの豊かさを実感する世界が混ざり合う。
ニモはニモノーバディ。ではミスターノーバディは?転轍機次第で行き先が大きく変わる列車のような人生においてミスターノーバディ、誰でもない誰かはつまり誰にでもなれる誰かだったのだろう。
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