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桜桃の味のleylaのレビュー・感想・評価

桜桃の味(1997年製作の映画)
3.9
自殺の手伝いをしてくれる人を車で探す男の話。

クルド人の兵士とアフガニスタン人の神学生に断られ、最後に手伝いを引き受けてくれたのは、トルクメン人のバゲリという剥製師のオジさんだった…。


👇以下、ネタバレ含みます⚠️











作品を観ながら、タイトルがどう物語と結びつくのか考えていました。
自殺したい男に向け、オジさんによって語られる
「すべてを拒み、すべてを諦めてしまうのか?
桜桃の味を忘れてしまうのか?」
この言葉の前後に今作が集約されているのかなと思いました。

太陽や星がいかに美しいか、季節の果物がいかに美味しいかを語るオジさんの言葉はキアロスタミ自身の言葉に思えます。

風景を映しながら、あえて声だけで語る演出もよいのです。人とのつながりの意義も感じるオジさんの温かい言葉でした。

神学生が言う、コーランは人殺しを禁止していて、自殺も人殺しと同じだと。それなのにテロや戦争を行う矛盾をほのめかすのが監督らしい。

そして、現実に引き戻されるラスト。
一面の緑が春を思わせ、走る兵士に生と死の影を見る。
「死」を考えることは、おのずと「生」を考えることになることに気づかされます。
人生を俯瞰で見つめて「生きろ」と言われてるような結末でした。

観る人によって考える景色が違って見える作品ていいですよね。
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