マーくんパパ

桜桃の味のマーくんパパのネタバレレビュー・内容・結末

桜桃の味(1997年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

題名とキアロスタミの名前はよく耳にする程度のゼロ知識で鑑賞。イラン映画なんだ、イラン映画初めて観る、初めての異国の景色、丘陵の荒れ地、砂埃まう細い曲がりくねった崖地を行く車。何かに悲観し今晩崖下の穴に入って睡眠薬で自殺しようとしている男、明朝それを見届けてスコップで土を掛けてくれる人を探している。クルド人の若い兵隊、アフガン人の神学生に断わられる。車内での対話、頼まれて戸惑う相手の表情が実に素朴で自然で新鮮。3人目の老人は応諾するが自分の若い頃、甘い桑の実のお陰で自殺をとどまった話をして諫める。さて翌朝…。『蒲田行進曲』的意表を突く幕尻。雲間の月を穴の中から見上げて目を閉じた所でフェードアウト、果たして自殺を決行したのか?死んだのか?あの老人は約束通りやって来たのか?確定材料はない。自分はそこまでの流れの中に身を置いたとしてどうしただろうかと考えさせる。シンプルだけど圧倒的な絵力、貧困・政治・宗教的な幾多の課題で悩みを抱える全世界の弱い人々に発するメッセージが押しつけがましくなく、しかも強烈。