マヒロ

ニア・ダーク/月夜の出来事のマヒロのレビュー・感想・評価

3.5
軟派なカウボーイの男・ケイレブは、家に帰る道すがら出会った謎めいた少女に噛み付かれ吸血鬼の身体となってしまい、同じ吸血鬼の一味と行動することになってしまう…というお話。

紳士然としたヨーロッパの吸血鬼と違い、アメリカが舞台のこちらではパンクスタイルのチンピラで、夜になったらバーにカチコミたむろしている奴らの血を強引に吸うという豪快なんだか風情がないんだかという感じで、その大味な感じが面白い。

監督はこれが単独ではデビュー作のキャスリン・ビグローで、掘っ建て小屋での銃撃戦で、銃弾だけでなくそれで空いた穴から漏れる日光すらも凶器になるシーンは緊迫感あって良かった。
というか、後に夫になる(そして別れる)ジェームズ・キャメロン組のランス・ヘンリクセンやビル・パクストン、ジャネット・ゴールドスタインら『エイリアン2』の顔ぶれが吸血鬼一味としてそのまま出ていて、そういえば先述のバーで暴れるシーンは『ターミネーター』っぽいし、この頃すでにキャメロンとの交流があったんだなと思ったり。

インパクトのでかいパッケージの写真にデカデカと写っているのは、ボロクソになっているので分かりにくいけど実は主人公ではなくビル・パクストンで、実際劇中でも主人公はずっと人間と吸血鬼どっちつかずの態度を取るばかりでイマイチ影が薄い。強引に巻き込まれたからしょうがないといえばしょうがないんだけど、ビグロー監督らしい「行き着くとこまで行ってしまってもう戻れない」みたいな破滅的な精神を持っているのは吸血鬼達の方で、なんか取ってつけたような適当な感じのハッピーエンドも含め、監督がやりたかったのはあくまで吸血鬼側の物語だっだんじゃないか。
思えば、全く性質の違う集団の中に放り込まれる話といえば同監督の『ハートブルー』っぽいし、既に片鱗は見えてるんだなぁ。

(2018.69)
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