Dick

ウォーキング・ウィズ・エネミー / ナチスになりすました男のDickのレビュー・感想・評価

3.5
❶マッチング:消化良好。
➋WWⅡ末期のハンガリーでナチス兵に成りすまして、多数のユダヤ人をホロコーストから救った実在の青年を主人公にした物語。
➌冒頭とエンドロールで示されるように、本作はピンチャス・ローゼンバウムの実話から着想を得て作られている。
ナチス親衛隊のアイヒマンやスコルツェニー等、実在の人物が実名で登場するが、主人公や恋人の名は仮名である。
①冒頭で:「inspired by a true story」。
②エンドロールで:「This film was inspired by the courage of Pinchas Rosenbaum whose passports and rescue missions saved thousands of lives. His family was murdered in Auschwitz along with 500,000 Hungarian Jews.」。
❹両親と妹弟がアウシュヴィッツに送られ、唯一人生き残ったユダヤ人の主人公、エレク(ジョナス・アームストロング)は、親友と共にブダペストのグラスハウス(中立国スイスの駐在外交官事務所)で、危険なユダヤ人救出作戦に従事する。
❺ユダヤ人や仲間達が次々と犠牲になっていく中で、エレクと恋人のハンナ(ハンナ・トイントン)は、九死に一生を得る。
❻銃で撃たれて死んだと思われたエレクが、実は生きていて、アメリカで幸せな家庭を築いていた等の都合の良すぎる描写や、いささか手前味噌的なエピソードもあるが、それは、エレク達が強運に恵まれた結果であり、多数のユダヤ人の命が救われた事実は賞賛に値する。
❼舞台は、13年後、1957年のアメリカに飛ぶ。エレクとハンナの養子となった戦災孤児が、成長して結婚式を挙げ、エレクとハンナに感謝するエピソードで本作は幕を閉じる。そして、エンドロールで、その後の主な登場人物の結末が示される。
❽反ナチスの物語は色々あるが、本作は、それ等の中でも長年歴史に隠されていた珍しいハンガリーの物語で、大変興味深く観た。
❾時代考証がしっかりしていて、戦争シーンも迫力タップリで、見応えがあった。
❿トリビア:ハンガリーの人名表示:
①ハンガリーでは人名は日本と同様、国内では「姓」―「名」の順、外国向けには「名」―「姓」の順に表記される。
②日本で一番有名な存命中のハンガリー人と言えば、『倫敦から来た男 (2007)』や『ニーチェの馬 (2011)』の映画監督タル・ベーラ(Béla Tarr、Tarr Béla/ 1955 - )だろう。彼の名は、「タル」が「姓」、「ベーラ」が「名」であり、日本では「タル・ベーラ」と表記されるのに対し、英語圏では「Béla Tarr」と表記されている。
③この事実を知っている人は多くないと思う。小生は、10年程前、同じ職場に、.独身時代ハンガリーに2年間滞在されていた珍しい経歴の主婦の情報で初めて知った。

(2018/05/18シネマスコーレで鑑賞)
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