ニシカ

クワイエット・プレイスのニシカのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.8
スタートダッシュは素晴らしい。
開始10分での緊張感と期待値向上はかなりの仕上がり。
 
荒廃した街、音を殺しながら物資を集める家族。
父と母、耳が不自由な姉、発熱を発症して自分だけでは立てない兄、おもちゃを欲しがり音を立てないか家族か冷や冷やさせながら動き回る弟。オープニングの無音の中、物語の置かれた世界を上手く表現し観る者をその世界へ誘う。
 
大きな音を出すと、“何かの生物”に殺される人類に落ちいった世界。
 

=映画の世界にツッコんだら始まらないけど、、ね=

音に反応する何かの生物に世界の軍隊は負けたの?
音を遮断しやすそうなシェルターは無いの?
子供生まれそうなのに、音がしない場所を他に探さないの?
滝の近くに住めばいいじゃないの?
なんて観た人の数だけの疑問がありそうでツッコミ処が満載な設定ですが、この家族が生き残っているのは、聴覚障害のある長女が家族にいたことにより手話が使えたことが大きいんでしょうね。
(途中、それぞれの家が高原で合図のように火を上げるシーンがあり、それぞれが距離を取って生活していることを想像させるシーンがありますが、、基本家族以外の接触は無いです。)
 
唯一、中盤で出てくる殺された老人と声を上げる老人が出てきますが、男同士のパートナーであったりとLGBTを匂わせたりさせているのは昨今の多様性に配慮しすぎな気もしますが、、。
 
 
=ホラー映画を表世界に家族を描いた父から娘・息子への愛の物語=
 
音に反応し人間を襲う"何かの生物"によって荒廃した世界で、生き残った1組の家族。"何かの生物"は、誰かが音を立てると、突如現れて即死へ至らしめる。
手話を使い、裸足で歩き、道には砂を敷き詰め、静寂と共に暮らすエヴリン&リーの夫婦と子供たちだが、エヴリンは出産を目前に控えていた。
 
この筋書きなんだから、子供が生まれる時は声が出るし泣き声がするしと想像させるホラー映画ですが、“何かの生物”に対峙しながら臆病に育ち始めた息子への強く生きてほしいという思い、聴覚障害を持つ娘への言葉を通して伝わらない愛を表現した人間賛歌になっている構造です。音が出せない世界でイヤホンを片方づつ耳にしエヴリン&リー夫婦が静かに踊り、微かに漏れるその音楽は‪ニール・ヤング‬の“Harvest Moon”。多くの会話が出来ない状況の中、月の夜にダンスを踊りながら、愛を伝えるというこの曲が持つメッセージ。男二人で食料を捕獲しながら息子への男としての強さと優しをを育む時間。リーが娘へ手話で伝える命を懸けた最後のメッセージ「ずっとお前を愛していた」。"何かの生物"の襲来の合間に、これでもかと家族愛が詰め込んいます。
 
個人的にはエンドはもう少しはっきりした形であれば評価が高くなったとは思いますが、続編も決定しているみたいなので結果はあのエンドで良かったかも。。うーん、。
 

親子で観れる希少なホラー映画。
 
冒頭のスーパーにスナック菓子が余っていたのは、食べると音が出るからなんですね。それとリンクするかのように、映画場内のポップコーンが食べきれないで余る現象が発生している静寂と緊張感がある作品でした。

絶望的な荒廃の世界においても、食事のシーンで神に祈りを捧げるのが印象的だったな。
ニシカ

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