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クワイエット・プレイスのレクのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.5
音を立ててはいけないというアイデアは行動の制限として心理的に追い詰めていく。
そこに親子の愛、家族の物語を挿入し上質なドラマ性を演出。
肌で感じるホラー独自の緊迫感と高揚感、ここぞのタイミングで驚かせるアメリカ的ホラーの緩急が作風に上手く調和している。

自分が思うアメリカ的ホラーといえば音で驚かせることがテンプレであり、今作の静謐を要するシチュエーションにおいては最も効果的な手法。
家族愛、驚かせる演出、そのアメリカ的な王道な作りが音を立ててはいけないという単なるアイデアひとつで突き詰めた映画でなく、あくまでもホラー映画として観客を楽しませることを突き詰めたかのようで好感が持てるんですよ。

では今作がどう観客を楽しませることを突き詰めた映画なのかについて語らねばなりません。
皆さんは、自分を楽しませてくれる映画とはどのような映画だと思いますか?
自分はですね、その世界観に没入させてくれる映画です。

勿論、その世界観に入れなくても素晴らしい作品はたくさんあります。
しかし、鑑賞中に作品中の何かに心を捉えられている状態、鑑賞後に現実に引き戻される尚且つ心に留まり続ける感覚を味わえるもの。
それこそが自分が『映画を楽しめた』と感じる大きな要因の一つです。


今作「クワイエット・プレイス」はその観客との一体化という点においてある種のアトラクションのような臨場感を味わえるのです。

まず、退廃した閉鎖的な街並み。
やはり登場人物たちが置かれた状況というものに我々は敏感です。
それはその映画の世界観に入り込もうとするが故。
そうです、世界観に没入することでその恐怖心や登場人物の心情を我々はより密に感じることができるのです。

次にその世界観を肌で感じてもらうこと。
冒頭始まって数秒で「音立てたら即死」というキャッチコピーが脳内に過ぎり、張り詰めた空気が劇場内を包み込み。物音を立てるどころか息付く暇さえ無くしてしまう。

音を立ててはいけないという精神的な緊迫感と音を立てたら即死という視覚的な恐怖のバランスが秀逸であり、アメリカ的ホラーの要素を存分に活かした作品だと思います。
個人的には精神的な恐怖が好みではあるが、今作においてはアメリカ的な演出、体感型で且つ視覚的な恐怖への満足度が大きい。
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