Daisuke

クワイエット・プレイスのDaisukeのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
4.0
[怒号]

「音を立ててはいけない」

私がこう言った映画に惹かれるのは理由がある。まず子供の頃に見た「トレマーズ」という映画だ。
トレマーズは地下に潜むある生物が襲ってくるパニックモンスターものの傑作で、地面の足音などを感知して襲ってくるという発想が素晴らしかった。

次に「霊幻道士」や「幽玄道士」などにおけるキョンシーものだ。
キョンシーは音というか呼吸に反応して襲ってくる。目の前にきたキョンシーに音を立てず息を潜める光景にドキドキだった。

こういった「音を立ててはいけない」という映画を子供の頃から体験してきたので、この映画もまたどうしても気になってしまったのだ。

今作では冒頭から何やら小声で物音を立てないようにしている家族が描かれる。
そう、すでに「始まっている」ところからスタートとなっている。
この音を立ててはいけない緊張感は、「音が鳴る」事で緊張状態をマックスに持っていき、何かが現れ、収束する事でようやく解き放たれる。
通常のサスペンスやホラーでは「物語の進行」「犯人や化け物などの緊張状態」「一時的な解放」そしてまた「物語の進行」という風に回る。
ところがこの作品では「物語の進行」が常に音を立ててはいけない緊張状態が発生しているため、オープニングから最後まで気が抜けない珍しい作品だった。

そのため普通の映画よりも登場人物たちに目がいってしまう。音を立てないか?声をあげないか?と。
そしてそんな中、冒頭で起きてしまった「ある出来事」が家族の中に重くのしかかってる事が描かれている。

この映画は音を立ててはいけないという「ひとつのアイデア」だけで最後まで作り上げた映画だが、その中にはしっかりとした家族模様が描かれていた事が素晴らしい。

今作は音がコンセプトであり、重要なキーにもなっているため、環境音のみや無音の状況も多い。(バックのミュージックは結構大きく鳴りますが、、、笑)

そんな無音、無声の状況が多い今作だからこそ、ある人物の「声」が劇場で大きく響いた時、深く感動してしまった。

クワイエット・プレイス(静かな場所)に

怒号が鳴り響く

どこまでも、大きく、深い

愛の怒号が
Daisuke

Daisuke