おなべ

クワイエット・プレイスのおなべのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.7
物語の登場人物同様に、劇場で観ているこっちまで息を潜めてしまうほど緊張感と緊迫感に包まれた作品。とある噂では本作を鑑賞していた爺があまりの緊張感に息をするのを忘れてしまい、そのまま無呼吸で救急車に運ばれたという話を聞いた。なんて危険な映画だ。

《ジョン・クラシンスキー》監督は本作で、監督、共同脚本、製作総指揮、そして主演を務めた。監督は敢えて家族の魅力を引き出すことで、観客が家族を心配して自然とハラハラするように仕向けたという。その敏腕演出により監督の紡ぎだすサイレント世界に馴染むのはそう時間はかからなかった。メインアクターに『ガール・オン・ザ・トレイン』『ボーダー・ライン』でお馴染みの《エミリー・ブラント》、《トッド・ヘインズ》監督の『ワンダーストラック』に出演した《ミリセント・シモンズ》、『サバービコン』『ワンダー君は太陽』等の大作に連続で出演し最近名を馳せた《ノア・ジュプ》が脇を固めている。

《エミリー・ブラント》は相変わらず安定の好演。《ミリセント・シモンズ》ちゃんは実際に聴覚障害の持ち主で、手話での会話でやり取りを行っていたが、演技に関しては逆に音の出し方が難しかったと語っていた。《ノア・ジュプ》君は絵コンテを見て純粋に恐怖心を抱き、そのお陰で自然と役に没入する事が出来たそう。

“音”に反応し人間を襲う「何か」によって人類は滅亡の危機に瀕していた。生き残った人々はなるべく音をたてないように隠れてひっそりと暮らしていた。そんな世界に隠れて生きる5人の家族。しかし、何たる運命の巡り合わせか母親は近々出産を控えていた…。

「何か」を世界から駆除する的な根本的な解決等の壮大なスケールにする事も出来たと思うが、欲張らず1組の家族に焦点を当てる事により物語の深みが増し内容も纏まりのある面白い作品に仕上がったと思う(終わり方も)。さらに。中盤以後に明かされる「何か」のビジュアルがとにかく気持ち悪くて、そのお陰で「何か」が来る恐怖に馴染み始めた中盤以後も継続して恐怖心が掻き立てられたのがGOOD。また、設定を活かした突き詰めがしっかり出来ていたので、粗探しをせずに物語に没頭できたのもGOOD。役者の好演でさらにGOOD。特に《エミリー・ブラント》はベテランならではのリアリティのある好演が映画の質を高めていた。


【以下ネタバレ含む】


◉この「音を立ててはいけない世界」という設定の対処法を自分なりに考えてみたが、「防音室を見つけて半永久的に暮らせる衣食住システムを構築する」しか思いつかなった。
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