飯山ミツル

クワイエット・プレイスの飯山ミツルのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
2.7
ホラーの定義とはなんなのか。
そんな本質を考えさせられる映画だった。

いつかTVか何かで予告を見て、
「音を立てたら“何物か”に殺される」という
その設定だけでかなりの興味をそそられた。

この時の私の興味はその「何物か」が何なのかという一点にあった。

これまでそれなりに多くの映画を観賞してきた中で、
自分の好みの傾向というものがそれなりに分かってくる。

結論から言うと作中に「謎」が散りばめられ、
ハラハラするストーリーの中で、
視聴者にその謎解きをさせ、可能であれば最後にその予想を裏切るものが
私の心をくすぐるものだ。

各ジャンルの定義は各々違うだろうが、
私が一番ピンとくるものはこうだ。

「謎」が主題であればミステリー
「恐怖」が主題であればホラー
「緊張感」を主題とし、「謎」に重きを置いているものがサスペンス
「緊張感」を主題とし、「恐怖」に重きを置いているものがスリラーだ。

これで言えば、私は「サスペンス好き」ということになる。


では、この映画は一体なんだったのか。

予告を見る限り、
正体不明の何物かに殺される「恐怖」
音をたててはいけないという「緊張感」
そもそも、その何物かが「謎」

予告映像や音響効果を見ると「ホラー」か「スリラー」だが、
恐怖を全面に出しているわけではなく、
音をたてることができないという「緊張感」の方が強いため、
どちらかというと「スリラー」と言えるかもしれない。
いや、でも「正体不明の何か」という謎も残っている。

本編を見るまではそう思っていた。

しかし、鑑賞後すぐに謎は解けた。

正体不明の何かは「バイオハザードに出てきそうな怪物」だった。

いや、確かに予告で大きな爪痕もあったし、
そもそも「音をたてたら即死」なんて、人間ではない何かじゃないと
成り立たないのだが、割とすぐに判明した。
バイオハザードに出てきそうな怪物は、視覚ではなく聴覚によって獲物=人間の位置を把握していた。これも割とすぐに判明した。

全編通して、一貫していたのは
その怪物から「どのようにして生き残るか」だ。
音をたてずに会話する方法、つまり手話や、音をたてずに歩く工夫。
緊急時に音をたてずに報せる方法など。

つまり、この映画は表面上はホラーやスリラーと言えるのだが、
結局のところ「サバイバル映画」なのだ。

こうなると話は別だ。謎なんてどうでも良いのである。

映画の終わり方がまさにそれを物語っていて、
「生き残るわよ!」的な母親のドヤ顔で幕は閉じられる。
これからゾンビ無双する勢いのドヤ顔である。

結局、その怪物が何物なのかは最後まで語られなかった。

ただ、この映画はこれで良いのだ。
もしも、この怪物が生まれた(現れた)背景や、
対策を講じる国の様子など、外部の様子が描かれていたら、
それこそB級パニック映画になっていたことだろう。

そんな背景は一切排除して、一つの家族に焦点を絞り、
サバイバルさせることに注力した監督は称賛せざるを得ない。

ただ、あの環境下で妊娠・出産させる設定は鬼畜としかいいようがない。

追記
ポスターにサバイバルホラー書いとるがな
飯山ミツル

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