あしたか

クワイエット・プレイスのあしたかのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.6
[あらすじ]
音に反応して人間を襲う“何か”によって、人類が滅亡の危機に瀕した世界。リーとエヴリンの夫婦は、3人の子どもと共に、あるルールを守って生き延びていた。“決して、音を立ててはいけない”。手話を使い、裸足で歩き、道には砂を敷き詰め、静寂と共に暮らす日々。だが実は、エヴリンは出産を目前に控えていた(dTVより)


怖さ★★★☆☆
緊張感★★★☆☆
家族ドラマ★★★☆☆

最近よく見る「〇〇してはいけない」系のホラー。後続作品である『バード・ボックス』 (Netflix映画/こちらは"目を開けてはいけない"ルール)の方を先に見ていなければ新鮮味を感じてもう少し評価が上がったかも。

この手のホラーでは子供が死なないのが一般的だが、序盤からその法則を破ってくることで誰が死んでもおかしくない緊張感が生まれたのは良かったと思う。
同時にこの展開がトラウマを抱えた家族のドラマ構築にも一役買っている。

"音を出したら化物に襲われる=音を出さなければ襲われない"という法則をどれだけ守れているか、つまりリアリティがあるかどうかが緊張感を生み出す為には重要だったのだが、今作では肝心のその部分が結構ガバガバ。
「音出してないのになんで去ってくれないのか」「あんなに遠くの音に反応すんのにすぐ近くの赤ちゃんの鳴き声には反応しないんかい」といったツッコミどころが絶えない。完全に造り手の都合の良いように話が進んでいくのでそこは少し萎えるポイント。
この部分をもっともっとシビアに突き詰めてくれればより緊迫感に溢れる傑作になったかもしれないだけに惜しい。というかそもそもこんな状況で赤ちゃんを出産するという設定に無理がありすぎる…。

それ以外にも正直ツッコミどころは多い(あんなクリーチャーごときに人類が絶滅寸前まで追い詰められるわけがないだろうとか、最初から川の近くに住めばいいのではないかとか、出産が5分で終わってたまるかとか)。

それでも全編ほぼ手話会話による独特の空気感だとか、ミリーブラントの陣痛を耐えて声を殺す迫真の演技だとか、見所は多い。90分という短い尺の中で矢継ぎ早にピンチが訪れる構成は正解だったと思う(設定の勝利みたいな映画なので長尺にするとダレそうだし)。

アメリカ人が大好きな家族ドラマに関しては及第点。父親が終盤に娘に手話であるメッセージを伝える場面はグッと来た。聴覚障害を持つ娘がもたらすラストの展開も熱い。
終わり方もスカッとしてて良い。続編は是非この直後から始めてほしい。

欲を言えば、化物たちが襲来したばかりの頃の混乱した様子を見てみたかった気もするが、それをやろうとすると製作費が跳ね上がってしまうので仕方ないか。

音を出さずに生活する為の工夫には成程と唸らされるし、あらすじから期待するサバイバルが概ね見られる作品になっていると思う。ただ縛りプレイホラーとしてはよりハードな描写がある『バード・ボックス』に軍配が上がるかと。
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