Tako

クワイエット・プレイスのTakoのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.0
『音で驚かせる』ホラーの手法をストレートに活用した意欲作。
ただ、敵の性質とオチはいまいち…

音に敏感に反応する謎の生物によって人類が追い詰められた世界で、ひとつの家族がアイデアを駆使しながら懸命に生きていく物語ですが、映画館までが音一つない静寂な空間になるのは非常にオモシロかったです。

キャラクターがとにかく息を潜めて生活をするので、観てるこっちまで息が詰まってくるようなリアリティがあります。
BGMもほとんどなく、会話も囁き声という徹底ぶり。

これによって、しばしば非難されがちな『とにかくデカい音を出して怖がらせる』ホラー的手法が、大手を振って使えるのが目から鱗でした。
なにせ音を出したら襲い掛かってくる化物ですから、化物が活躍するシーンではかならず大きな音を出さざるを得ません。これならばいくらデカい音をだして驚かしてきても違和感がなく、むしろ自然なくらいです。
この工夫は非常に理にかなっていて、作品全体のクオリティを支える良ギミックだと感じました。

しかし、キャラクターやストーリーについてはかなり粗が目立ちました。
とくにキャラクター造形については、娘の立ち位置があまり良くなく、これはやってくれるなよ、という言動を始終やらかすので、感情移入するのが厳しいのが難点です。
自分の過ちによって弟が亡くなってしまっている、という心の傷を負っているのは理解できますが、それを差し引いても立ち振る舞いが良くないので、彼女を中心に物語が動いても作品に乗っていけません。
過酷な環境でどうにか家族を守ろうと奮闘する父親にばかり感情移入してしまい、むしろ不憫にさえ思ってしまいます。

また終盤で明かされる敵の設定、弱点についてですが、こんなんで倒せるのならとっくに絶滅させているのでは? という弱々しいもの。
軍隊や国家がボロボロにされるほどの強力な相手ではない、と感じてしまうため、今まで見てきたのは何だったんだ…という肩透かしを食らってしまいました。
とくに銃で駆除できるのが良くありません。敵に科学力があるわけではないので、扱いが害獣と同じになってしまいます。

とはいえ、それまでの緊張感は凄まじいものがあり、映画館が息をひそめる様はかなり異質なもので貴重な体験ができました。
残念ながら映画館以外での視聴となるとそれほどの異質体験は得られないものの、部屋を真っ暗にして音量を大にすればそれに近い状況にはなるので、もし視聴される方はお試ししてみてはいかがでしょうか。
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