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ALONE アローンのJIZEのレビュー・感想・評価

ALONE アローン(2016年製作の映画)
3.8
灼熱の大地に晒された砂漠の地雷原を舞台に暗殺任務に失敗した米国兵が左足で地雷を踏んだ状態で52時間生き延びる凄まじい闘志を描いたワンシチュエーションもの映画‼鑑賞回は初日の最前列のど真ん中で戦場へ没入する感覚で観た。おもに"前に進めない男"の命運を最後まで見届けると映画のジャンルがサバイバル(序盤)からヒューマン(終盤)へ移行してる事実に気付かされる。まず原題の「Mine」は"私の家族"と"地雷"のタブルミーニングの意味でとれた。また作品を簡単に要約すれば"ただ一つの場所にひざまづいている男の話"なのだが本編はまさに恐怖心のメタファーを織り込む"含み"の連続で構成されている。ジャンルの系譜でも例えば近年で「リミット」や「127時間」,「ザ・ウォール」など"何かしらの身を滅ぼし兼ねない状態に立たされた男が自力でジブンと向き合う"人間ドラマである。作品の冒頭で兵士二人を乗せたヘリが砂漠のど真ん中からどこかへ向かいつつも回想が挿入されある女性とその兵士が抱擁を交わす場面を映し出しながらも時制は現在軸に戻りテロ一派の結婚式に兵士二人が身を潜めながらも遭遇する。最初の地雷を踏むまでの手堅い数十分程度の導入部は兵士たちに課された失敗できない緊迫感を保たせながらも荒涼感ある砂漠をバックに名調子で描き込まれ急ピッチでクライマックスを迎えるような雰囲気は緩急があり評価がガン上がりしました。序盤でマイクの相棒がモルヒネを二発打ち判断を誤り狂いだす一幕は立場ゆえの軽率すぎる印象を受けました。

→総評(勝因は生存率約7%のシューマン作戦)。
主演アーミー・ハマーが砂漠の危険なド真ん中で左足に地雷を踏み立ち往生する孤独な黙演を考慮しても結果的に"惜しい映画"ではある。シチュエーション映画特有のディテール面でも主に相棒のむざんな死骸,電池切れのGPSや無線機,大規模の砂嵐,地雷地帯を網羅したジグザグに歩く謎のベルベル人(自由な人),夜に現れる無数のハイエナ,部隊から見離された絶望など娯楽に特化させたお約束も十分に用意されていた。とくに52時間の規定制限が17時間プラスで延長されるくだりは失神しそうなぐらい絶望する。苦言を呈せばもう少しステレオタイプのプロットに特化してれば作品の世界観に異なる奥行きを持たせれた気がしました。つまり作品の推進力が特に後半では時制の操作でほぼ全部が成立してしまってるため現在進行形で何か危険に曝されるといった機転がほぼ生じない。いわゆるサバイバル要素の積み上げが停止している事実は否めなかった。例えば幻覚や睡眠障害,潜在意識の兆候などで煙に巻いた感じがある。あとこの最悪な現状に立たされた明確な原因(敵)が不在なのも主人公との対峙要素がなく非常にシニカルでありながらもやや物足りない。ただ,中盤,意識が途絶えかけ地面へ倒れ込みそうになるマイクに対してベルベル人の老人が瞬時に支えるあるアツい場面や終盤,発煙筒が置かれた場所とマイクのその場から手を伸ばしても取れそうで取れない絶妙な距離感など要所要所では客観的に計算し尽くされた脚本の美点が垣間見える。マイクが片膝をつくポーズと愛の誓いのポーズをシンクロさせたのも考え抜かれていた。エンドロールの緩い音楽も諸にコメディです。というように地雷地帯に迷い混んだ男が目の前で相棒を亡くし今度はジブンがその立場に置かれる想像を絶するような結末は...おもに"動けない"主人公の過酷な生い立ちにフォーカスさせながらも現実とすこしの寓話性を盛り込みつつヒューマン要素が濃い砂漠系シチュエーションもの映画でした。
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