あまのかぐや

ある女流作家の罪と罰のあまのかぐやのレビュー・感想・評価

ある女流作家の罪と罰(2018年製作の映画)
3.5
国際線の機内にて。
メリッサ・マッカーシーがオスカーの主演女優賞にノミネートされて、その時にちらっと流れる映像をみて気になっていましたが、これ日本では公開見送りになってしまったのね。見送りになるでしょうよ。(日本での)有名スターも、イケメンも、ラブも、アクションもない、冴えないおばさんが主人公の洋画。でもそういうところにこそ「見たことないような世界」を丁寧に見せてくれる映画があったりするのです。

51歳の孤独な作家、今は無名人物の伝記を執筆中。仕事の面でも生活の面でも先行きは真っ暗な彼女が見出した、突破口とは。

実に、「これまでみたことない」メリッサ・マッカーシーでした。

実話(!)とはいえ、最後まで美談でも希望でもなく、ひたすら暗いけど、彼女の人生、その背景や裏について思いを馳せたくなる。
口が悪く、呑べぇで、だらしない中年女。世の中に隠れて、世の中へのささやかな反抗心だけを生きがいにをするような彼女の生き方。あのバディに溢れんばかりの彼女ならではの魅力をそぎ落とした地味なメリッサ・マッカーシーのルックスが、これはこれではまり過ぎ。

いろいろダメな人間なのですが、その悲哀や孤独をも一緒ににじみ出る。汚部屋。がさつな言動。お酒の飲み方もみみっちいし、人をだまして金銭を得るその手段も、とても褒められたものではないです(偽の手紙をねつ造されて、性格や行動まであることないことねつ造されちゃう故人を思うとね)でもそれは生活のため、たった一人だけ心を通わせた同居猫・年老いたジャージーの治療費の為だと思うと「どうかバレずに、猫・創作活動という、彼女の生きがいをどうかどうかこのまま…」と感情移入しないではいられない。(ジャージーの「アレ」はダメ。ほんとに辛いので、この点をもって二度はみられない映画になってしまった)

古本屋の女店主や、エージェントの女性とのやりとりをみて、ちょっと前ならこういう役って中年男性が演じたかもしれないけど、あえてメリッサ・マッカーシーを主演にして、恋愛要素ではなく相棒として、ゲイのホームレス、しかも彼女以上にダメ人間(リチャードEグラント)を彼女のそばに置く。心を通わせたり、たくらみごとをしたり、裏切ったり、…恋愛をストーリーの中心におかなくても、いやおかないからこそ、人間ってこんなに情緒豊かに描けるのだな、と思った。

オスカーで紹介されたときのタイトル「Can You Ever Forgive Me?」、まさかこの邦題のこの未公開映画とは結びつかなかった。まぁ確かにそうなんですが。
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