MasaichiYaguchi

四月の永い夢のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

四月の永い夢(2017年製作の映画)
4.0
人気俳優やアイドルが主演を張り、最新VFX技術を駆使したり、派手で刺激的なシーンやアクションが繰り広げられるハリウッド映画や邦画が幾つも公開されている中で、これといった出来事も派手さも無い本作だが、描かれた情感や癒しとも言えるものが心の襞に染みてくる。
ヒロインで元中学の音楽教師である滝本初海は3年前の春の出来事から喪失感に囚われ、恰も靄のかかった春の中で迷子になってしまったかのような日々を送っている。
ある日、人生のモラトリアムにいる彼女に1通の手紙が届いたことを切っ掛けに、代わり映えしない日常に変化が訪れる。
そのことに機を合わせるように、元教え子や大学時代の友人、彼女に想いを寄せる青年が、自分の世界に閉じこもっていた彼女の背中を押していく。
この作品で心に残る印象的な台詞がある。
「人生って失ってゆくことじゃないかと思う。失い続ける中で、その度に、本当の自分自身を発見してゆくしかない。」
本作のヒロインだけでなく、我々は年を経れば経る程に大切な存在を様々な要因で失ってゆく。
時に大きな存在が失われた場合は、このヒロイン同様に茫然自失で心の時計が止まってしまうかもしれない。
この作品は、美しい映像とエモーショナルな数々の音楽で彩りながら、ヒロインの喪失からの心の旅を描いていく。
心の旅をする初海を、ジブリ映画「かぐや姫の物語」でヒロインの声を担当した朝倉あきさんが、時に繊細に、時に凛と演じていて印象的だ。
喪失と真に向き合って彼女が見出したもの、ラストシーンの彼女の表情が温もりとなって心に残ります。