櫻

四月の永い夢の櫻のレビュー・感想・評価

四月の永い夢(2017年製作の映画)
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宛先のない手紙を、透き通ったきれいな声で朗読するのを、静かな場所で聞いているようだった。あの日から彼女は、白い夢の中にいる。桜の花びらが、雨のように舞う夢の中に、立っている。気づいたら、私も彼女と同じ夢の中に居るような気分になった。そのうつくしさに、何も言わずに立ち尽くすばかりだった。時々、つうと頰に涙を流したりもした。

この町のどれくらいの人が、心に秘めごとを持ちながら暮らしているのだろう。洋服の下に、痣をたくさん隠して、ハツラツと笑うあの子のように。楽しそうに生きているあの子だって、消えてしまったあの人だってきっとそうだ。

人生は増えていくように見えて、失っていくことばかりだ。なにかを失っていく度に、立ち止まって、それを受け止めて、そこからどうまた生きていこうか。それは、自分で決めなければいけない。落ち着くまでは、そこに留まるのもいい。もう届かない誰かの手を、いつまでも忘れられなくたっていい。彼女は、微笑みながら、少しずつゆっくりと歩み続けている。