サラリーマン岡崎

四月の永い夢のサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

四月の永い夢(2017年製作の映画)
4.8
人生は失っていくもの、
そのセリフが社会人を3年経験してきた今だからこそかなり実感ができた。

失っていくときに感じていく喪失感、
その喪失感の中にはその人の弱さが現れるとこの映画を通して感じた。
タラレバの精神で、後悔を抱えることで喪失感は起きる。

それは死だけでなくても、
仕事とか学校とか人間関係とか、
いろんなところにはびこると思う。

普段は主人公の様にできるだけその喪失感から現実逃避しようと忘れようとするが、
本当にふとしたちょっとしたきっかけで、
その喪失感を思い出す時がある。
特に楽しい時間を過ごしてるときにそれは訪れることが多い。
新しい男と少しいい感じになった主人公が音楽を聴きながら歩いてる中、ふと音楽を止めた瞬間がある。

そして、その後悔はなかなか人には言えない。
自分を哀れんで欲しいから、それを隠そうともする。
でもそんなことをしてる自分が一番悲しい。
そうやって自分が可哀想可哀想って思うと主人公の様に「さすがに緩すぎ」と言われてしまう。
それが繰り返され、悪いループに陥ってしまう。

そんなときに立ち直れるのは1人では無理。
主人公もある女性とそして、新しい男に支えられ、再生していく。

特にこの新しい男の描き方がいい。
多分元彼は結構傲慢で、彼女のことを振り回してきたんだろうと映画の節々で感じられる。
それに対して、新しい男・三浦貴大は奥手で仕立てに出る。
比喩としても元彼は彼女の下に流れる川で、新しい男は彼女の上に川の様に垂らされた手ぬぐいの様に表される。
そんな色々な情景を見てると、
この先彼女は平凡だけど笑って過ごしていくんだなと安心できる。

それは喪失感を抱えた様々な人に対して、
相手や自分の弱さに縛られずに生きることが、
1番の解決方法だということを教えてくれる。
教え子とその恋人のくだりもそうだ。

日々過ごしていく中で積み重なる喪失感に、
少し安心感をくれる、そんな作品だった。

あと、ラジオの使い方がとてもうまい。
こんなラジオの使い方があったのか。