slow

四月の永い夢のslowのレビュー・感想・評価

四月の永い夢(2017年製作の映画)
4.6
あなたが包んでくれた手は、今もまだ、恥ずかしそうにここにある。そんなことを思うのは、いつ以来だろう。過ぎ去った日々。戻らないはずの時間。蘇る瞬き。それは、あなたとわたしの見た景色。四月の永い夢。

主演を務めた朝倉あきが『かぐや姫の物語』で声優を務めていたからというわけではないけれど、本作から受けた印象は高畑勲的な世界。人の美しさと懐かしさと恐ろしさをカケアミで丁寧に表現したような、男女の会話など『おもひでぽろぽろ』を想起させたし、語尾が吐息まじりになる朝倉あきの声が妙にクセになった。音楽も素晴らしい。イタリア映画音楽を思わせる情感もありつつ、しかしながら感動を押し売るわけでもなく。満たしては引いていく呼吸のように、晩春の、あるいは初夏の鮮やかな光を優しく表現するものだった。

夢は思いもよらぬタイミングで覚めるもの。その時、必要になるものは、同じ景色を歩く人と、そのための赤い靴なのかもしれない。
slow

slow