『静かな雨』の前に中川龍太郎監督の作品を予習。同監督作品は鑑賞済みの『わたしは光をにぎっている』に続いて今作が2作目。
3年前に恋人を亡くした27才の主人公・初海は、アルバイトしていた蕎麦屋が閉店することで無職になる。同じ頃、蕎麦屋の客で染物職人の男と、中学校の元教え子でジャズシンガーを目指す女の子の登場で初海の止まっていた時間に少しずつ変化が生まれる。
タイトルは四月だけど描かれるのは夏。けだるい蒸し暑さの中で、何をするにもどこか空っぽの初海。
愛する人を失ったかなしみを内に抱えた初海。演じる朝倉あきの透き通った声が耳に残り、その儚げで美しい姿が目に焼き付く。
大きな展開はないが、何かを失って生きることに積極的でなくなってしまった主人公が、何気ない日常で周囲の人間と関わるうちに少しだけ前に進む。
挿入歌で流れる赤い靴の『書を持ち僕は旅に出る』も心地良い曲だった。
監督は繊細な喪失感を描くのと言葉を選ぶのがとても上手だと感じた。