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ハンターキラー 潜航せよの百合のレビュー・感想・評価

ハンターキラー 潜航せよ(2018年製作の映画)
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海中と陸上(と本国)で別々に進行するプロットを混乱しないようにまとめてあり見やすくてよい。また規律が徹底されている潜水艦の中と実力主義の荒くれ者の集まりの特殊部隊という対比が心地よいリズムを生んでいる。
途中までは観客にもロシア側の内情は明かされないので露骨な仮想敵国扱いで気合入ってるなと思っていたものの実際はさすがにそういうことはなくクーデタというかたちで話は進んでいく。第三次世界大戦を防ぐためにアメリカがロシアの最高権力者を救出するという話の規模のデカさにはたしかに魅力があった。フィクションとはこうでなければという感じもする。しかし基本的に本作品は「メンツや規則のしがらみから柔軟な選択ができないトップの下で現場が自分の意志で行動してなんとかなる」という主題で貫かれており、ロシアの中での現場の人間である艦長とアメリカ側の艦長が協力できるのもこうした論理の変奏といえる。だがそれにしても艦長の「規律的に正しくあることと生きることのどちらが大切だ?」という部下への説教のシーンなどはもうわかったよという気分にさせられる。
それでもやはり適切なシークエンスの切り替えで飽きさせることなく進んでいくのだが、三幕も終盤の騙された反乱軍と大統領の対峙のシーンはさすがに冗長であった。上述の世界観を維持しているわけだから死んだと思われていた人望に厚かったらしい元艦長が呼びかけただけで攻撃がやむというのは100歩譲って許せたとして通信可能帯に浮上しているのに大統領としてすぐさま命令を上書きできるはずのところをにらみ合いのシーンを引っ張ってミサイルまで飛ばさせるというのは過剰というものではないだろうか。スペクタクル性はそれまででじゅうぶんにあるのだから蛇足と言わざるを得ない。
アニメ等でよくみるデカいテーブルをひっくり返して銃撃戦に応戦するところが見られただけでもかなり満足である。あとロシアの俳優さんの言うファックユーが妙に耳に残った。あそこの間はコメディ的にも上手だったと思う。
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