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ブレス しあわせの呼吸のJIZEのレビュー・感想・評価

ブレス しあわせの呼吸(2017年製作の映画)
3.7
賛:ポリオ患者特有の生涯は病院のベッドで過ごさなければならない医学上の常識を打ち砕くように車椅子と呼吸器をくっ付けフツウの生活を全うさせる。いわば楽観的でユーモアがある主人公の人柄に重い病との対比では良かった。生きるうえでユーモアがいかに大事かがイノベーションの発想を飛び越え映像の端々から伝わってくる。一見超ヘビーな題材だが中心のストーリーを笑いに転化させヒューマン映画として爽快感すら残す無類の作品に思う。

否:事実に基づいた題材のため子供が観れば少しホラーに映るかもしれない。例えばドイツの医療機関に訪れた際に人工呼吸器を使う人が首だけだしてる部屋などリアルを丹念に抽出して描かれてるため目を背けたくなる描写が劇中でないわけではない。また主人公の困難を極める状況に対して周囲の緊張感のなさが逆にフィクションぽい感じを誘発していたように見えた。残酷な目の前にある現実をほぼ抑制させるフィルターなしでリアルに構成が取られているため鑑賞時はそれなりの覚悟が必要かも。

主演アンドリュー・ガーフィールドの固唾を呑む芝居はハンサムで爽やかながらポリオの深刻な麻痺で余命三ヶ月と申告され逆境に置かれつつもジョークや奮闘する様が彼のキャリアと重なる節もあった。それこそ昨年みた『アンダーザシルバーレイク(2018年)』での空虚で女の尻を追いかける感じとは180度ちがう。また最愛の男女を病が切り裂く作風は『博士と彼女のセオリー(2015年)』に良い意味で酷似してるのも注目かもしれない。最終的には実直な病ものの作品で哀愁を感じとれるイギリス映画でした。
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