円柱野郎

劇場版 フリクリ プログレの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

劇場版 フリクリ プログレ(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます


2000年から2001年にかけて発売されたOVA「フリクリ」の続編。
強烈な出来事が展開される夢を見て目覚める少女・ヒドミ。
夢の中の出来事こそあるべき世界と考える彼女だが、目が覚めた後の日常は特別のなことなんてないいつもの日々だった。
そんなある日、彼女は突然現れた女・ジンユに車で跳ね飛ばされる。
米国では全12話として放送された内の1シーズン6話分をまとめた劇場版。

先に公開された「オルタナ」よりも、こちらの「プログレ」の方が「フリクリ」的なものに求める何かが詰まっていた気がする。
中学生時代の青春的な感じも、強引な展開も、シュールなギャグも、世界を説明しきらない感じも。
the pillowsの曲もただ後ろで流れているだけではなく、この世界を形作るキャラクターとして使われていた感があって好感が持てた。
冒頭から"Thank you, my twilight"のイントロをスマホのアラーム音として表現しているあたり、良いツカミだと思う。

まあまだオリジナルOVAで感じた魅力には何かが届かないが…、それでも6話を6人の監督がそれぞれ自分の「フリクリ」として表現したそれは、OVAと同じ地平の上にある物語としては普通に楽しめたかな。
色々画策している割に主役と絡みそうでほとんど絡まないマスラオとアイパッチも良いキャラしていたし、ギャグの面でもいいフックになっていたねw
全体を通してみると話の締めくくりとなる6話が少しとっ散らかった感はあるのだけれど、そこはちょっと惜しいかなあ。
アクションシーンの見せ方も、もうちょっと格好いい構図とか取れそうとか思うんだけど…、まあそれは観ている側の勝手な思い込みもあるか。

オリジナルOVAでインパクトのあった突然漫画のコマの様になる演出は、本作では少女漫画バージョンで登場。
台詞の重ね方とかコマの遷移とか、少年漫画風だったOVAとはまた違った感じで動く漫画表現の実験がされていて興味深かったなあ。
5話では、他の話数と違って少し粗目の線画で描かれた独特な感があったけど、「あれは「かぐや姫の物語」で手間をかけて表現されてた筆のような質感を、原画残しという形でもっと簡易的にやってみたものだ」というのは監督談。
そういう実験的な部分も好きですよ。

さて、「フリクリ」といえばハルハラ・ハル子が話を引っ掻き回さないと始まらないが、本作ではラハルとジンユという2人に分裂しており、それぞれの立場で介入してくる。
ハル子の目的と手段のために少年少女が翻弄されるという構図が見える分、ハル子に「オルタナ」の様な部外者感もなく纏まっていた感じはあるか。
分裂した二人のうち元のハル子に近いイメージのラハルを林原めぐみが、キャラの違うジンユの方を沢城みゆきが演じているが、ジンユはともかくラハルはなんで新谷真弓じゃないんだろう…。
まあ分裂後なので違うっちゃあ違うキャラだし、声が違ってもいいのではあるが。
劇中では2人が融合するシーンもあるので、せめてその場面くらいは新谷真弓の声で良いんじゃないのと思ったのだけれど。

でもラハルを演じた林原めぐみはさすがでしたよ。
すごくハル子っぽい言い回しを完璧に演じてみせるんだから。
でもこれは新谷真弓のモノマネの類という事になるのか?それとも林原めぐみだからこそのラハルというキャラクターになるのか?
そのへんを若干モヤモヤしながら観ていたのも事実。
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