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劇場版 フリクリ オルタナのnobuoのレビュー・感想・評価

劇場版 フリクリ オルタナ(2018年製作の映画)
3.4
前作にあたるOVA版フリクリは高校生時代に後追いで鑑賞。ミスチル→the pillows→フリクリ...という「好きなもの連想ゲーム」で知り観た結果、凄まじい衝撃を貰った。前衛的なストーリーにセンスの塊のような演出の数々、随所で流れるpillowsの名曲達の親和性。
流石に完璧な名作だとは思わない。突っ込みどころは多いし、所々ノリについて行けず辟易する部分もある。しかし「芸術的な才能がある人たちはこんなモノが創れるのか。俺みたいな凡人には絶対無理だ。」多感な時期にこんな劣等感すら覚えさせるほど(そもそもクリエイターやアニメーターを目指していた訳ではないが)の作品であることは間違いない。10年経った今もなお、その衝撃は忘れられない。


...続編となる本作の不安要素はあまりに多すぎた。総監督が「少林少女」の本広克行(ドラマ「SP」は好き)。関係者のTwitterを見る限り相当揉めたらしい現場。何より主演の新谷さん(a.k.a.グリッドマンの六花ママ。そもそもあの人絶対フリクリのハル子がモデルだよな)が脚本家をガチでdisっていたのを見てしまい、ゲンナリした俺は劇場に行くのをやめた。そして結局弟が買ったBDを借り鑑賞。


先述の通り、フリクリの良さは感覚的な「気持ち良さ」にあると感じていた。映像的な快感と音楽による高揚感、この二つ。
その点、本作はその快楽があまり感じられなかった。製作陣がほぼ総取っ替えされているようなのでその影響? 庵野秀明らがバッチリ関与していた前作との比較は酷かもしれないが。
細かい設定の解説やストーリーの辻褄合わせなんて必要無いから、せめてこの点をとことん突き詰めてほしかった。


「名作と呼ばれる作品とその続編、別々の視点で見ればどちらも良い作品」というケースは多い。最近の自分の中では「ブレラン」と「2049」がそれに当たる。
だから「前作は前作、本作は本作」として切り離すべきなのはわかっちゃいる。わかっちゃいるけど、それを切り離して評せなくなった自分がいる。一時間前に観た本作よりも、はるか昔に観た前作の方が脳裏に鮮明に焼き付いている位だから。それを塗り潰すほどの濃さも、別のアプローチから殴り込まれてぶっ飛ばされるインパクトもなかった。どうしてもそう考えてしまう。


...映像面で一応印象に残ったのは、主人公達の女子高生グループが服をひん剥かれて数分間カーテン越しの全裸シルエットで進行する場面と、実写映像に愛嬌のある4頭身キャラが重なる切ないエンディング位か。後は前作の焼き直し乃至劣化コピーのような演出ばかり。
音楽面にはさらにガッカリ。pillowsの楽曲の使い道がことごとく上手くない!ビシッとキメられそうなシーンに限ってアガるイントロをことごとく台詞で被す謎采配はいただけない。
ただ、エンディングで流れる書き下ろし主題歌「Star overhead」は良かった。個人的には「Rodeo star mate(日本版スティッチ主題歌!)」以来8年ぶりの名曲。前作に対するアンサーソングのような歌詞とメロディでストーリーのほろ苦さ・切なさが増幅された。終わり良ければ全て良し...とは言わないが、0.3点くらいは加点されたというのもまた事実。

権利関係で無理だろうけれど、作風からしてプロダクションIGよりもガイナックス色が濃い目のトリガーが製作していればここまで世評が賛否(どちらかといえば否寄り)に分かれることもなかった...と思う。スタッフロールによると一応トリガーも作画の面で関与しているみたいだけれども。

もう一つの続編「プログレ」はどんな出来になったのか、程々の期待をしつつ観ます。
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