久保

トップガン マーヴェリックの久保のレビュー・感想・評価

5.0
頭からケツまで興奮しっぱなし!
久しぶりに「100点の映画」を観た!

ハリウッドという規模でしか成し得ない映画の魔法がかかりまくった大傑作。

さまざまな方向へ気を配っているため無難な王道作品になりそうなのだが、奇跡のバランスで全てが絡み合って超一級のアクション映画に仕上がっている。(敵国をマクガフィンに留めている所もマスターピースになるに相応しい器の大きさをもった作品。)

それを体現できるのは全人類が認める最後の銀幕スター、トムクルーズ。
まずはこんな完璧な続編作ってくれてありがとう!!!

冒頭「DENGEROUS ZONE」が流れてから一気に世界観へ引きづり込む。

これこれ!これが観たかった!というファンへのサービスカットが大量投下。やはりトムは観客の気持ちを分かってる!(『マ◯リックス レザレクジョンズ』よ、彼を見習え。)

そして、マッハ10のダークスター試験でしっかりと映像のアップグレードを見せつけてくる。監督とトムの過去作『オブリビオン』的なほぼSF戦闘機がかっこいい。

無人機が台頭し、有人戦闘機の予算が打ち切られかけるも己の身一つで皆の夢を背負うマーヴェリック。

これはもう「マーヴェリック」=「トムクルーズ」であり「戦闘機」=「アクション映画・映画館」の明確なオマージュであり、本作のメッセージ性をガツンと提示してくれる。この時点で少し涙腺が緩む。

つまり『トップガン』というトムクルーズの分身でもある作品の続編を描く意義とは、「映画産業を第一線で支える世界の主人公トムクルーズ自身の映画讃歌であり、映画を守り続ける覚悟」なのだ。

今作のトムはもはや憑依とか演技とかいう枠を越えて、そこに生き様を刻んでいる。
アカデミー主演男優賞レベルでキャラクターと同化してるが、割とガチで名誉賞みたいな特別枠をあげてもいいんじゃないだろうか。

本来2019年に公開予定だったこともこの映画の価値を大きく底上げする追い風になっている。
コロナ禍以降、いくつもの大作映画が映画館公開を見送られ配信限定作品となっていった。
配信サービスの流通により映画は映画館ではなく、手のひらの上で個人視聴するものへと変化していった。
映画産業は衰退し、ハリウッドで飯を食える人は減り続ける一方である。

そんな不遇の時代の中、「映画館で観るために作った映画」としてトム・クルーズが公開を先延ばししていたことには別の意義がある。
彼が映画人の希望の象徴であり大スターであるからこそ映画に携わる全ての人々の未来を背負っているのだ。
「いずれパイロット(映画)は廃れるかもしれない。だが、今日じゃない。」
自分が生きてる限り、映画は死なない。
マーヴェリックの台詞は、そのままトム自身の台詞なのだ。

YouTubeにコロナ対策がずさんだった撮影スタッフ達へブチ切れるトムの音声動画が上がっているのだが、その迫力と覚悟は候補生たちの命を握るマーヴェリック大佐そのものだ。

実際に5ヶ月に及ぶ訓練を費やし、戦闘機に6台ものIMAXカメラを搭載。演者に紛れもなくかかるG(重力)が「映し出され」、今後観ることが出来ないであろう80年代あの頃の「死ぬ気で映画を作る」本気が伝わってくる。

とにかくドッグファイト(空中戦)がここまで面白い映画はこの先拝めないだろうから、劇場でやってる間に観に行ってほしい。

そして何よりトムが、映画館を「延命」させるべく作った「映画館で観ないと意味ない映画」なのだからその映画愛に応えたい。

36年ぶりに公開されたハリウッドアクション超大作の続編は、『ニュー・シネマ・パラダイス』に並ぶ、いやそれ以上に純粋な「映画へのラブレター」だった。

「Don't think. Just do.」
久保

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