せーじ

トップガン マーヴェリックのせーじのレビュー・感想・評価

4.3
"The end is inevitable, Maverick. Your kind is headed for extinction."
(終わりが来るのは必然なのだ、マーヴェリック。お前のような存在は絶滅に瀕している)
"Maybe so, sir. But not today."
(そうかもしれません。でも、それは今日じゃない)

※※

331本目。今年最大級の話題をかっさらった作品のひとつであることは間違いないであろう本作。幾度もの公開延期を乗り越え、万感の想いで映画館に駆け付けた人も多いでしょう。自分は残念ながら映画館で観ることは叶いませんでしたが、どういうものなのかを体験する機会を心待ちにしていました。
ということで、TSUTAYAでブルーレイをレンタル、鑑賞。




…すごい作品でした。
しかも、本作自体が凄い出来なのはもちろん、本作の出来によって前作の価値までもが更に引き上げられようとしているという「映画としての力」をふつふつと感じた気がします。

■とてもわかり易く整理されているプロットと前作から歳月を重ねていることを最大限に利用した演出が感動的
まずはこの二つが高い次元にまで両立しているというのが素晴らしいと思いました。「何処でどういう作戦を遂行するのか」というのが明確で、しかもブリーフィングを進めながら説明っぽくせずに観客に手早く合理的に説明し、それを訓練シーンなどの映像でなぞって見せていく…という「わかり易さ」が見事だったと思います。訓練シーンがわかり易いと何がいいのかというと、それはもちろん"本番"のシーンがムチャクチャ面白くなってアガった状態で観ることが出来るから、ですよね。前作の戦闘シーンも確かにカッコよかったのですが、ここまでわかり易くはなかったのですよね。なので、「このミッションがどれくらい難しいもので、どういう状況で戦闘機を操縦しているのか」が明確だと、それだけでも全作よりも充実している様に感じられ、進化したなと思えるのです。この部分は作り手がプロット作りと撮影手法を妥協せずに練りに練った賜物なのではないかと思います。
また、前作からの「歳月の経過」という要素を様々な形でマーヴェリック自身やその周囲に散りばめることで、過ぎ去った時間の重みや切なさを感じさせられる演出の数々がとても素晴らしかったです。唸らされたのはやはり中盤にあったマーヴェリックとアイスマンとの"邂逅"のシーンですかね。その後の厳粛なシーンも含めて、そこには「それは今日じゃないイズム」がしっかりと根を張っていて、厳然と存在感を示せているからこそ、観ている我々も胸を熱くすることが出来たのではないかなと思います。(よって個人的には本作だけを観ても問題はないと思いますが、前作とセットで観ることをお勧めしたいです)この作品を観ているだけで「前作から本作までの間、確かにマーヴェリックやアイスマンたちはそこで生き続けていた…」というのがビンビンに伝わってくるのですよね。もうそれだけでも五億点だろう!と言ってしまってもいいのではないかなと思います。このあたりの要素が丁寧に描かれているからこそ、あんなに能天気に見えた前作までもが本作と共に価値が高まっていくように感じられるような、そんな幸福なシリーズになることが出来たのではないでしょうか。作り手の(トム自身の)この作品に対するリスペクトと妥協の無い努力がとんでもないレベルにまで炸裂している証ですよね。

ただ・・・

■次の世代との繋がりの薄さとやはり隠せない能天気さ
個人的な感覚では、マーヴェリック自身と彼の教え子たちとの繋がりはそこまで深く描けていないのではないかなと思ってしまいました。マーヴェリックが彼らと打ち解けるまでのプロセスが雑なのではないかなと思いましたし(浜辺でビーチバレーをやってOKってさすがにそれはちょっと…)、物語の重要なフックになるべき亡き親友の息子君との和解のプロセスも、半ばおざなり気味になってしまっていて食い足りないなぁと思ってしまいました。
そして、終盤の展開は個人的には最悪だったなと思います。ネタバレをせずに例えるなら「ドラゴンボールで結局最後に孫悟空がカタをつけちゃう感じ」ですよね、あれはまさに。しかもその方法も無理くり過ぎて、申し訳ないのですけどそのぶっ飛んだ展開にはちょっと笑ってしまいました。こういう展開だと、本作で語られるべきテーマのひとつであるはずの"イズムの継承"にもなっていないのではないだろうかとも思います。仕方が無いっちゃ仕方が無いのですけれどもね。。。
それにしてもそもそも、「ならず者国家の核施設を基地もろとも極秘に破壊する」っていうミッションってどうなんでしょう。それだったら自然相手(大型ハリケーンから人命救助に協力する)だとか、それこそアメリカ空軍の無人機が暴走して云々だとか、そんなことをさせずに彼らを十二分に活躍させるプロットを構築することなんて簡単なことだと思うのですけれどもね。結局そうなのか…というのがやっぱりちょっと個人的には残念でした。

※※

ということで、映像の美しさに加え、エンターテイメントとしての明確な楽しみ方を自然に提示しつつ、前作にも想いを馳せることが出来るという意味では、十二分によく出来ている作品だとは思います。後段で書いた苦言は筆者自身の好みによるところが大きいことなので、エンターテイメントとして楽しむのであるならば、そこだけに囚われすぎるのも勿体ないのではないかなと思ったりもします。もちろん、そういったモヤモヤも大事にするべきことだとも思いますが。
前作と一緒に、ぜひぜひ。
せーじ

せーじ