明月

金子文子と朴烈/朴烈(パクヨル) 植民地からのアナキストの明月のネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

大正時代。日本。

アナーキスト(無政府主義者)朴烈(パク ヨル)と金子文子の実話を元にした韓国映画。

朝鮮人に対する差別が蔓延る日本。
2銭を払わず、足蹴にされる朴烈。
にせん、と発音できず、「にじぇん」という朴を「朝鮮人のくせに」と蔑む日本人の男。

「犬ころ」という詩を読んで
文子が朴烈を訪ね、2人は同居し始める。

帝国主義の輩に、蔑まれ、
おでんの鍋をひっかける文子。
秘密結社の爆弾だと文子を抱える朴。

朴と同居誓約を書いて、お互いに拇印を押す。

個人の自由意志を尊重するのが無政府主義者だと話し合いの中で確認する。
文子は、秘密爆弾の件を黙っていた朴を叩き、「同志と認めないなら一緒には居られない」と憤る。

関東大震災が起きた。
震度7.9。
死亡者10万人、負傷者20万人
火災のため、外気温が46℃にもなった。

当局に対応を迫る暴動が起きそうな状態。
前内務大臣 水野錬太郎が戒厳令を発出するよう提言する。
「「朝鮮人たちが井戸に毒を入れました」と誰かが言っていました。」
と御前会議で発言する。
個人的に朝鮮に恨みを抱いていた人物であった。

不逞鮮人(朝鮮人)であることがバレたら、問答無用で自警団と称する者に殺される。
「15円20銭」と言ってみろと脅し、その発音で朝鮮人と決めつけて、竹槍で刺し殺す。
川へ投げ捨て、炎の中に放り投げる。
幼い子どもでも関係なく。

「朝鮮人が無差別に虐殺されている」と総理大臣が水野に抗議する。
水野は、これは自衛だと言い放つ。

自警団は、警察署にまで入り込み、虐殺を敢行している。
全国で3日の間に、6000人も捕まっていた。
これでは日本は野蛮な国と国際社会で非難されかねない。
誰か標的を探せ、と指示する水野。

不逞社が、爆弾を購入して秋に実行する予定だったと証言を得る。

朴は、治安警察法違反で検挙される。
社会主義者と不逞鮮人が暴動を企んで、先導したと。
朝鮮人が暴動を起こしたのに証拠が出ないと我々が困るのでは?と水野。

爆弾入手についての朴と文子の尋問が始まる。
裕仁皇太子を狙ったと朴が自白する。
大逆罪だと大騒ぎになる。

朴烈の取り調べ中に、皇太子の射撃事件が起きる。

不逞社に朝鮮の新聞記者が訪ねてくる。
朝鮮人虐殺が、朴烈の供述でなかったことにされると怒りを露わにする。

文子と朴は、刑務所で書信を交わしている。文子と書簡を交わせなくなると断食して抗議する朴。

法務官が朴と文子の精神鑑定を依頼する。
しかし、2人とも拒否。

断食して、文子と会えるように要求する。
朝鮮にいるお母さんに文子を見せたいと写真を撮影する。

朴烈は、大逆罪で起訴されることが決まる。

朴は、婚姻届を要求する。
死刑になる。遺骨を引き取れるのは、家族だけだ。
故郷に一緒に埋葬してもらえるから、と。

まるで、新郎新婦のような出で立ちで裁判に入る朴と文子。
安寧秩序を乱すからと一般傍聴は退席させられる。

天皇の神性さで国家が成り立っている日本。
悪魔的権力は、天皇であり皇太子だ。
と訴える朴と文子。

3・1運動を隠蔽したように、
朝鮮人虐殺事件を隠蔽しようとしている。
文明社会であるなら、遺骨を探し、軍と自警団を調査せよと主張する。

真相調査委員会を作るという水野。
朝鮮人虐殺に軍も加担している。
軍の責任を問えば、天皇陛下の責任を問うことになる。
早く朴烈を処刑せねばならない、と訴える水野。

朴烈を応援する人たちもあらわれる。

文子は、「朴の本質を知っている。私は朴を愛している。

朴とともに死ねるなら、私は満足しよう。

朴には言おう。
お役人の宣告が2人を分かちても、
私は決して、あなたを1人にしない」

判決は、「死刑」
文子は、「バンザイ」と叫ぶ。

しかし、天皇からの恩赦により無期懲役に減刑される。

文子は、刑務所で書いた文章を託して、宇都宮刑務所に移送される。
朴は、千葉へ。

「生きるとは、ただ動くだけではない。
私の意志で動いたとき、それが例え、死に向かうものであっても、それは生を肯定するものである。」

朴烈は、断食している。
俺を1人死なせないと言った。
文子は、死んだ。

自殺か他殺か、
死因は不明。
自叙伝を1000枚も書いた文子が遺書を書かずに死ぬだろうか?と仲間が疑問に思う。

誰よりも長く生きて貴様らがやらかしたことを全部さらしてやる、と水野に向かって叫ぶ朴烈。

朴と文子が映る写真。
実在の写真が重なる。

1945年、朴烈は解放された。


金子文子役の女優さんが、
めちゃめちゃ日本語がうまくて、
日本人かと思った。

こういう映画を日本人が日本でつくることは出来ないのか?と思う。
出来そうにないと思う自分は、何かの前提や偏見に侵されている。

歴史から学び、二度と同じことを繰り返さないことが人間として生きるということだろう。

あの時代に、日本人の女性がこのように生きたということを知れてよかった。
明月

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