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金子文子と朴烈/朴烈(パクヨル) 植民地からのアナキストのReiのレビュー・感想・評価

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関東大震災の際に朝鮮人が井戸の中に毒を入れて、暴動を斡旋した。という「嘘」が流され、それによって6000人の無実の朝鮮人の命が奪われたことは現代の中高の教科書の片隅に確かに残っている。
この事実を歴史に残すために命をかけて戦った人物が金子文子と朴烈である。
韓国目線で描かれた日本の物語は私達の主観的な歴史観が排除されたものなので、嫌というほどリアルである。なぜ朝鮮人の人々は殺されなければならなかったのか。今を生きる私達には到底想像できない凄惨な虐殺の事実に多くの人はただ言葉を失うと思う。
「天皇」の名の下になにもかもを正当化していた日本政府に対しての怒りを朴と木村は一貫して貫く。彼らの主張は確かに過激かもしれない。しかし、問題の本質はそこにはない。彼らがそのような主張を持ってしまうところまで追い込んだ「何か」にあるのではないだろうか。ここで重要なのは怒りの対象は決して「日本人」に向いていないことだ。この作品を見る際この点だけは気に留めておかなければならない。
朴と木村を演じる両キャストの演技、佇まいが本当に素晴らしく、2時間ずっと画面に釘付けになっていた。
「生きるということは、ただ動くということではない。自分の生きる意志に従って行動することだ。だからその意思に従って死を選んだとしたのなら、それは死の否定ではない。」
木村文子のこの言葉は彼女の力強い人生を表している。
朴と木村が命を懸けて歴史に残した事実から私達は必ずなにかを感じることが出来るはずだ。
生きたエネルギーを持った素晴らしい作品でした。
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