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金子文子と朴烈/朴烈(パクヨル) 植民地からのアナキストのleiene1991のレビュー・感想・評価

4.4
かっこいい。

詩の中に彼を見つけ共鳴し、同志の契りを結び2人共にアナキストとして権力に挑み抗い続ける姿は生き生きとしてて、たとえそれが死に至る道であっても"生きる"事を選んだ2人の選択に感動しました。

朝鮮植民地支配時代の日本、朝鮮人というだけで差別を受け疎まれる。
そんな中関東大震災が発生し、民衆の不安を鎮めるための対策として日本政府は朝鮮人の無差別虐殺、検束を開始する。
ここの政府内でのやり取りはやはり胸糞悪いものがある。
ただ映画の方向性としてはこれを諫める人もいるし、彼らと接していく中で少しは理解しようとしていたりと、史実として彼らが生きた事を伝える上に未来を見据えたものである事が分かる。

政府の抑圧を受ければ受ける程2人の絆は深まり、たった2人の言動に戦々恐々とする姿は痛快でもある

そして金子文子役を演じたチェ・ヒソさん
全く違和感の無い流暢な日本語に加えて、天真爛漫な振る舞いは女性として魅力的に映り、高圧的な看守や判事に一歩も怯む事なく闘う姿はかっこよく、色々な表情を見せてくれる。
彼女は幼い頃に両親や親戚から虐待を受け、朝鮮に渡り植民地支配の実情を間近で見てアナキズムへと傾倒していく。
支配する側の日本人の中にもこういった人がいたんだという、嬉しい。ではないけど驚きはありました。

「マルモイ」「密偵」そして本作と立て続けに観て特に感じたのは文子の言う通り、肉体は死んでも精神は生き続けるということ。
国家レベルであろうが個人レベルだろうが、傷付ける側はすぐに忘れようとするけど傷を負った側は一生忘れる事はなく、背負い続けなければならない。
いかに権力や国家というものが概念的な虚構であるか、考えさせられる良作でした。
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