はんそく負け

超力戦隊オーレンジャーのはんそく負けのレビュー・感想・評価

超力戦隊オーレンジャー(1995年製作の映画)
5.0
普段は隠れがちである悪役の恐ろしさを前面に打ち出したホラー要素と、大人の遊び心が見事にブレンドされた、ヒーロー映画史に残る異色作かつ大傑作です。本編を観ていなくても十分楽しめます。

そもそもこの小林義明監督は無機的な恐怖演出を得意としています。要するに、マネキン、人形や陶器のマスクといった人体を模したものの使い方が非常に上手なのです。それが本作「オーレンジャー」の敵である「マシン帝国バラノイア」との間に素晴らしい化学反応を起こしています。バラバラにされたロボットからは人体損壊を想起させられますし、橋を爆破するシーンでは、もちろん生身の人間は使えないので人形を用いますが、わざと人形だと認識させた上で燃やし、こちらの生理的嫌悪感を煽ってきます。一方でBGMは軽快なものを流したり、または無音にしたりとこちらも扱いが上手です。無機的な恐ろしさという点で氏の右に出る方はなかなかいないでしょう。

また、劇中にて「オーレンジャー イズ サノバビッチ!」などと「フルメタルジャケット」のパロディをしたり、さとう珠緒を縛って吊り上げた上で敵キャラに「エロス!」と発言させたり、隠そうともしない男性器のメタファーなど、書ききれないほどの遊び心が満載です。ここまで(良い意味で)下品なヒーロー映画は観たことがありません!

主役であるオーレンジャーの出番が少ないので非常にとっつきやすいです。所詮子ども番組の劇場版だと甘く見ずに、是非観て欲しい逸品です。