あきらむ

サンキュー・スモーキングのあきらむのレビュー・感想・評価

サンキュー・スモーキング(2006年製作の映画)
4.0
煙草のスポークスマン?なんだろうそれはと思って視聴を開始する。
すると冒頭で主人公ニックは僕は毎日1万人殺しているといわれる、世界中から嫌われていると皮肉のように堂々と言ってのける。もうここからただものじゃないかっこよさがっただよってきて興味をそそられた。
対称的に当たり前のことを善人面してならべたて大衆を味方につける人々や自分で考えずニックの意見をただ受け入れる人間にとにかく魅力がない。
作中のニックは悪を守る仕事として天才的なスピーチスキルでださい役所やださい人権団体を皮肉って一般オーディエンスの心さえつかんでしまう。彼らの周辺人物もアクが強いが魅力的でヤクザ映画的なかっこよさが演出されている。タバコ業界の裏のボスとのかかわりに至っては、ゴッドファーザなみ。ニック自身がそのような世界観で活躍する自分を楽しんでいる。
しかしやっぱりニックもただの人間的な部分がを見せる。
息子とのかかわりや女へのだらしなさで見えてくる。息子には良い父でいたいし、元奥さんと再婚した新しい夫のことを息子にとってはただのママとセックスしてる人にすぎないと言い張ってしまう、子供っぽさ。
注目したいのが、息子は割と早い段階でダサイ一般大衆からニック寄りの人物に変わっていくところで、反抗的な息子を一方的に抑えたり強制したりなんてことをニックは絶対にしないし、自分の仕事について冷静に論理的に息子に教えるし学校や国を馬鹿のように称賛することもなく、しゃに構えた姿で見る方法を教える。冷静に長期的に語り掛けていく。
ニックには親戚に一人はいるイカレタフーテンおじさん感がそこはかとなくただよっているため(離婚によってますますそうなったのかも)、優しい父性とユニークさで息子にアプローチしていて見ていて優しい気持ちになれるし、反抗のしようもないのだ。母親曰く息子は最終的にニックを神のように尊敬しニックが失態を犯した際に、最も力になってくれる。感動である。しかし励ましの言葉が父親を情報操作の王とたたえるところがコメディで、的確で面白いのかうれしいのか感動なのかよくわかない気持ちにさせられた。