垂直落下式サミング

3D彼女 リアルガールの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3D彼女 リアルガール(2018年製作の映画)
3.6
昨今、若い男女の俳優をキャスティングした恋愛ものが多い。安く作れて早く撮れるからなんだろうけど、それにしても多いな。毎月同じようなのが公開されてる気がするので、同一ジャンル量産体制と言っていいと思う。
こちらは、オタク男子とキラキラ女子の恋愛を描いた少女漫画の実写化らしい。主人公の佐野勇斗。二枚目だが本作ではずっと前髪を垂らして俯いていて、どもりながらぼそぼそ喋ったり早口で捲し立てたりとネクラ演技もなかなか上手かったと思うし、それらしい見せ場では中性的なかっこいいところもちゃんとみせて手堅く興味を繋いでいく演出も偉い。さらに階段落ちを披露するなど、身体を張った演技も見せて楽しませてくれる。
ヒロインを演じる中條あやみは、快活な可愛らしさでイマドキ女子を好演。コメディ演技に手慣れた感があり、あらゆる意味での格差カップルが右往左往する様子に説得力を感じた。
主人公の頭のなかで彼と会話する魔法少女を神田沙也加が演じていて、この絵柄はわりかし受け入れられやすい雰囲気なので安心。単に彼の「マイベスト萌えキャラ」というだけで、「嫁」と呼ぶような生々しさはないのも救い。
その他、つっつんに恋愛指南をするイマドキJKや、中庭で出会うオタ友など、脇を彩る女の子達も抜群に可愛かった。
でも、後半のハロウィンパーティのシーンはダメだね。キツイ。キャンプと同じくらいのテンションでよかったのに、作り込んだ段取り臭さと、それが上手くいっていない感じが、画面からにじみ出ている。他の撮影と比べると、ここだけ異様に浮いていてダサダサ。なんか恥ずかしくなる。
オタク男子を題材にする恋愛ものは、大抵の場合は主人公が「今まで」を否定して物語が終わる。『電車男』がそうだ。オタクはエルメスのためにマシな人間になろうとして、オタクであることをやめてしまう。本作は、その問題になかなか誠実な解答を用意してくれているので、そこが気に入った。
しかし、女性がほぼ確実に嫌悪感を示すようなキモオタ描写にまでは、さすがに踏み込めないか。こういった趣味を許してくれる女性だとしても、『まどマギ』や『ハルヒ』とかはまあOKかもしれないけど、『ラブプラス』や『閃乱カグラ』とかはアウトなわけで、『ワルキューレロマンツェ』『ましろいろシンフォニー』『千恋*万花』『ぬきたし』なんてとてもとても(当たり前だけどな)なわけじゃないですか。そういうの部屋にほっぽっといたら怒られるじゃないですか。つっつんのオタ部屋なんてお子ちゃまの遊びですよ。そりゃ、本当にヤバイもんなんて、パンピーにはみせられないんだろうけどさ。
キモオタに対して穏健派な人が譲歩してくれてもこのざまなのだから、僕が大好きなあれも、これも、どれも、世間一般的には「オタクのあんちゃんが観ている気持ち悪いアニメ」と括られてしまうのを再確認。そこらへんはフィクションとリアルに明確な線引きはしているんだと思う。
幻想を愛する我々。繁殖をしないことによって地球上のCO2を削減し生き残ると、無意識のうちに脳内に組み込まれた世代のラブストーリーは、まだまだ発展途上ジャンルらしい。