濱口監督の商業映画デビューともいえる映画であるので、ドライブ・マイ・カーを観る前に、監督の映画を観てみたいと思い観賞
一言で言えばわかりにくい映画である。すべての人が朝子や亮平や獏に感情移入できるとは思わない。
ただ、人間の感情とはもともとわからないものであるという前提に立てる人には響くと思う。
恋とは激情であり、衝動である。その突き上げる衝動のエネルギーがどうしようもなく本能的であるために、それを御することができない、それが人間であろう。
人間の感情には確たるものはなくて、相手により、時間により、様々なその人を取り巻くものによって、たゆたゆと流れ変化していく動的なものである。そしてその本能に時として逆らえない瞬間がある、というのも人間である
そのようなことが人間にはあると知ると、朝子が最後に真に依存しない独立した個人になり、亮平と生きていくことを選び取ったように、本能的に動いた自分でさえ、受け入れられ、それと共存できるようになるのかもしれない。
役者のプライベートにより、映画への評価や観客の観方が影響されてしまったことは残念なことである。
濱口監督の俯瞰的な絵の切り取り方、最後に亮平と朝子が走るところ、とても好きである
俯瞰的な切り取り方をすることをとても効果的に使える監督だと思った。またそのズームアウトしたときに流れる蝉の声がとても絵に合っていて、心に残った
東出昌大さんも獏と亮平の2人の人物をとてもよく演じ分けていたと思う。これからの作品も観たいと思わせてくれる役者さんである
