しらたまちゃん

寝ても覚めてものしらたまちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

フィクション作品は必ずしも登場人物に感情移入したり共感したりして楽しむものではないということを再認識させられる作品。『ドライブ・マイ・カー』で濱口監督作品をもっと観てみたくなり視聴。

各シーンが人物写真のようで綺麗だった。景色や雰囲気で魅せるのではなく、俳優やキャラクターの魅力で惹きつけることを狙いとする作風なのか。海や川のシーンであっても、登場人物の背中越しに映すカットが多かったのが印象的。

『ドライブ・マイ・カー』と同様、チェーホフを登場人物が演じるシーンや車で不意に北海道まで行ってしまうシーンがありなんとなくデジャヴ感。加えて、チェーホフのシーンを始め、震災ボランティアや旧友の国際結婚・難病など、盛り込んだ要素が渋滞して消化しきれていない印象を受ける。何故シンプルな恋愛映画に仕上げることをしなかったのか。

串橋夫妻と丸子夫妻(になるのか?)はそれぞれ全く異なる恋愛関係であり、この両者の対比で捉えると主題に近づくことが出来そう。串橋夫妻は初めて会った日からお互いに演劇について激しい口論をしていたのに対し、朝子と亮平が何か熱く語り合う場面は終始見られなかった。

象徴的なのが最後のシーン。亮平が「汚い川だ」と言ったのに対し朝子は「でも綺麗」と言い、それに対し亮平の返事はない。お互いに自分の感想だけをつぶやいており、発言の先に相手が不在なのである。そもそも2人の関係の進展のきっかけも亮平からの一方的なキスで、5年もの歳月をかけてもこの2人の関係は特に変容していないことが伺える。

最近、ちょうど『初恋の悪魔』で松岡茉優さんが多重人格の女性の役柄を演じていた。人格が入れ替わる瞬間に目線や顔つきがガラリと変わり、同じ衣装でありながら明らかな別人になっていた。これを観た後だったためか、東出昌大さんの演技には物足りなさを感じた。彼の他の作品を観ていないため何とも言えないし、不倫騒動の後に観たため辛く評価してしまっている可能性もあるが、亮平と麦を見分けるのに苦労したことだけは事実。
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