Inagaquilala

寝ても覚めてものInagaquilalaのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
4.1
「万引き家族」がカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したことで話題を集めているが、こちらの濱口竜介監督にとっては、初めての商業映画作品も、同じコンペティション部門に出品されていた。濱口監督は、これまでインディペンデントな作品を撮り続けてきたが、前作の「ハッピーアワー」は、海外での映画祭でも高く評価され、今回のカンヌ国際映画祭も、個人的に密かに期待していた。是枝裕和監督の「万引き家族」にも負けず劣らずの作品で、この2作品の出品は日本映画の評価をかなり高めたようにも思う。

濱口監督には珍しく、原作ありの作品で、芥川賞作家・柴崎友香の同名小説を映像化している。突然、失踪してしまったかつての恋人にそっくりな男性と恋に落ちてしまう女性が主人公なのだが、311の東日本大震災なども絡めながら、人物の心の襞を、考えつくされた映像で丁寧描写していく。一人二役の恋人役を、これも濱口作品ではレアな、人気俳優の東出昌大が演じているが、妙に濱口ワールドに溶け込んでいるのが不思議だ。

個人的には最後のシーンが、実に濱口作品らしく印象的だったが、ほかにも心に刻まれるシーンはたくさんあり、観た後にくっきりとその残像が焼きつくのは、あいかわらずのものだ。たぶん、この作品を皮切りに商業映画にも積極的に取り組むと思われるが、ポスト是枝の筆頭であることには間違いはない。いつもながら、何度でも観たくなる作品でした。
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