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寝ても覚めてものMinCのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
5.0
黒沢清監督(『岸辺の旅』『ダゲレオタイプの女』『散歩する侵略者』)のenfant terribleとも言える濱口竜介監督の商業第1作そしてカンヌ出品作!

唐田えりか嬢も東出さまもずっと生気がない青白い顔色に見えて、どんなにエモいシーンだったりどんなにねっとりチューしてたりしても、なぜだか「あの世」感がぬぐえなくて、、
地震の後に徒歩帰宅者の雑踏のなかで出会うシーンなんて「あの世」と「この世」の狭間での再会のようで、振り返ってはいないけどオルフェウスの神話の振り返りの一瞬を想起してしまった。

『なみのおと』
『なみのこえ』
と確実に地続きの作品だし
麦との堤防シーンなども、
東北の海岸では、死者の亡霊に会った話がたくさん聞こえてくる、というのを想起せずにはいられなかった。

『ハッピーアワー』で感じたあの言葉にできない人と人との間合い、唐突な居心地の悪さみたいなものの絶妙な表現も確実に結びついているし
『不気味なものの肌に触れる』で染谷くんと石田さんが触れそうで決して触れあわないコンテンポラリー・ダンスを展開してたのは、ラスト、ベランダで、「もう朝子のことを信用することは決してない」と言ったあと、増水した濁流を眺めて「汚ったねぇ川!」と言った涼平に、「でも、、きれい」と返す朝子のまっすぐと交わることのない平行した視線に繋がっていく。

脳内が掻き乱されるような不穏で素晴らしい恋愛ホラー作品。

仲本工事と猫がまた絶妙。
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