カツマ

寝ても覚めてものカツマのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
4.3
狂おしい。忘れられない。病と化した恋心はいつまでも心の奥底に巣喰い続け、自らの理性を食い荒らす。だが、だからこそ、寝ても覚めても、夢と現実、愛する人の顔がチラつき、彼女の心は振り子のように揺れ動く。
この映画は真実を描いていると思う。そこにあるのは嘘のないリアルな恋心。恋愛が美しいだけのものならば、人はこんなにも愛する人に恋い焦がれたりはしないはず。ときに醜く思える感情に身を任せ、どうしようもなく魅了されてしまうのだろう。
素晴らしいラストシーン。どこまでが夢のような時間だったのだろう。確実に人を選ぶ作品とは思うけれど、まるでヨーロッパ映画のような読後感が余韻として残る。

写真展で鼻歌を歌いながらフラフラと歩く青年。まだ大阪住まいだった朝子は、偶然にもその不思議な青年、麦(ばく)と出会い、電撃的な恋に落ちる。2人の恋は燃え上がり、朝子は周りの制止など耳にも入らない。だが、そんな矢先、麦は忽然と姿を消した。
それから2年、舞台は東京へと移る。酒造会社で働く亮平は、会社近くのカフェ店員の朝子と出会った。だが、朝子は何故か亮平を避け続け、2人はどこかギクシャクとしてしまう。その理由は亮平が朝子のかつての恋人、麦と瓜二つの顔を持っていたからだった。ときは2011年、2人を結びつけるある出来事が突如として起こり・・。

前作『ハッピーアワー』で5時間の大作を撮り、大いに注目を集めた俊英瀧口竜介がついに商業映画へと進出!その象徴的なキャスティングとなった東出昌大は、一人二役で顔は同じなのに全くキャラクターも相反した別人の役を見事に演じ切り、どう考えても内容的にはインディーズ臭のするこの作品に、メジャーな要素を植え付けることに成功している。

綺麗なものだけ見ていたいならばこの映画はきっと合わない。だが、綺麗じゃないはずなのに、この映画はこんなにもロマンチックだった。醜い感情の中にこそ、本当の愛が隠されていると信じたかった。それは恋から愛へと変わる瞬間を描いた、嘘のないラブストーリーだったのだから。
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