ゆゆこ

寝ても覚めてものゆゆこのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
3.7
感想、おもったこと、書きます。
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まず、麦でバクですか。最初はなんのことかと思ったけど、動物のバクが出てきてから、なるほど、”夢喰いバク”とかけているのかなと、くすっとする。

私は麦を好きだと思っている、という夢を、朝子はみていた。

本当は、亮平との出会いでとっくのとうに夢から覚めていたのに、気づくとまどろみに落ちてしまって「好きだよ好きだよ」を呪文のように呟やいて、揉み込んでいないと現実に起きてられなくなっているようだった。
麦と再会し、亮平といた自分のほうが夢を見ていたのかもしれない と血迷い始め、そんなこと言っておきながら”携帯電話という現実”を投げ捨てて逃避行をするアベコベなロマンチスト、つまりはそれが”寝ても覚めても状態”だが、多分それにイラついた観客も多いはず。笑

それにしても、

「海が見たくて降りたのに、ずっと海にたどり着けないんだ」

と防波堤の手前で呟く白シャツたなびく男には正直不安しか抱けない。
北海道という日本の最北(突き当たり)まで行って初めて「あ〜、そっか、ここが日本の端っこか。、朝子ちゃん、どうしよっか」
とさえ言い出しそうな男を目の前に、きっと朝子は「ああそっか。私が現実として、生きる相手として愛したのは麦の顔をした麦じゃなくて、麦の顔をした亮平だ」
と気付いたんだろうと思う。

しかしまた、ひょうひょうとした顔で「許してくれないのは分かってるけどあなたしかいない」とか言い出す朝子に「お前まじでやべえやつだな」と亮平が投げ捨てる流れは本当にその通りで、思わず「よく言った」と心の中で拍手もしてしまった。

ただそれでいて、

今という瞬間を逃したら、もう次はないかもしれない

という”人生の中で最大の賭け”の瞬間が現れる。
その瞬間が、この作品の中ではたくさん出てくる。
地震も、病気も。
もしかしたら整形も、国際結婚も…?笑

私はこれが苦手だ。

今日も明日もどうなるかわからない不確かな中で、
何を知っていてわたし達はその選択を選ぶのだろうか。正解だと思って選んでも、正解だと分かったわけじゃない。
じゃあいつわかるのかと言えば、それは自分でいつかはたと気付くものかも知れないし、失敗したと思って振り返るものかもしれないし、もしかしたら他人から肩を叩かれて気付くのかもしれない。

そもそも、そんな世の中で、
永遠の恋に愛に落ち続けることこそ難しいのかもしれない。
いや、もしかしたら落ち続けるというより、落ち合い続けるということの方が適切かも。

だから、ずっと同じ場所に留まり続けるなんて、ありえないんだ。

朝子やその周囲も、大阪や東京、仙台などを動き回る。
物理的にはすんなりと居場所を変えられるのに、
心理的にはそれが難しい。そうやって時に精神と身体のチグハグになるのに、ひとはそれに気付きにくい。
なぜなら人間は不器用だから。
いつも答えを知らない、そういう生き物だから。

だから楽しいとも思えるし、
だから辛いと思える。
そうだよね、と共感もできるし、
なんでだよ、と反感も持つ。

ラストショットの横並びは、
そういうことに少し気づけた人たちの人間らしい愛情表現の不器用な瞬間であって、
改めて現実を直視する瞬間。

正直、この2人にはこの2人で幸せになってほしいとは思いづらい。し、朝子が朝子の愛を見つけたからと言って、必ずしもそれが2人の人間の愛になりつづけるとも限らない。

ただ、運命のように出会って突然のキスから始まった雲の上の話ような恋愛をしてきた彼女にとっては、きっとずっと人間臭くて生きた心地のする経験だったんじゃないかと思う。

まあ、あくまでもこれはフィクションです。