これは面白い。高評価もわかる。既視感を感じさせない、斬新な恋愛映画のようでいて、描かれるのは恋愛における普遍的な問題か。
そして主人公の朝子（唐田えりか）がまた…。人形のような顔。つかみどころがない雰囲気。…これはやばい。妙に惹かれる。だからか、バクが突如行動を起こす、あのファンタジックな出会いのシーンにも違和感を感じず。
朝子は麦（バク）と出会い、つきあうようになる。しかしバクは自由奔放な男。朝子のことを思いながらも、突然に出て行ってしまう。のちに朝子の前にあらわれたのが、バクと瓜ふたつの男・亮平。朝子は亮平とのつきあいを始め、亮平の愛に幸せを感じはじめたが、そこにバクがあらわれる…
同じ顔の人間を愛してしまうのは罪なのか。朝子は葛藤を覚える。「心」に惹かれているにもかかわらず、「顔」が同じであるために、「顔」だけに惹かれたのじゃないかと。
根源的な問題のようで、ついつい考えてしまう。そしていつの間にか朝子の心情に寄り添っている。この朝子の心情の変化に観客がついていく映画ともいえるので、そのあたりの演出がうまいということか。
また、展開がものすごくスピーディ。合理的ともいえるか。唐突の感もある震災や演劇議論のシーンも（震災のシーンがすごい。不穏。恐怖。）、物語のなかで重要な意味をもつ。そうか、『ハッピーアワー』にも似た箇所があった。
しかしこれは男にも女にもいえようが、逃げられると追いかけてしまい、追いかけられると逃げてしまう。安定を求めながら、不安定なものに惹かれる。恋愛はなかなか難しいし、面白い。
